キタサン落鉄に泣く…武豊「これも競馬」 同世代シュヴァルグラン遅咲きのJC制覇
オーナーは大魔神こと佐々木主浩氏
5番人気シュヴァルグラン(中・白帽)がキタサンブラック(右・黒帽)、レイデオロ(左・白帽)を撃破しジャパンカップ制覇 【写真:中原義史】
元メジャーリーガーの大魔神こと佐々木主浩氏がオーナーのシュヴァルグランは、今回の勝利でJRA通算22戦7勝、重賞は2016年GII阪神大賞典、同年GIIアルゼンチン共和国杯に続く3勝目。オーストラリアから短期免許で来日中のボウマンは嬉しいJRA・GI初勝利となり、同馬を管理する友道康夫調教師はジャパンカップ初勝利となった。
オーナーは元メージャーリーガーで大魔神としてもおなじみ佐々木主浩氏だ(前列中央) 【写真:中原義史】
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武豊「アレッ?っていう感じがあった」
連覇ならなかった武豊騎乗のキタサンブラック、左前脚落鉄の不運が痛かった 【写真:中原義史】
「今回はスタートも決まって良いレースはできたと思います。ただ、最後はもう少し突き放せるかと思ったんですが……。左前を落鉄していましたね。どこで落鉄したかは分からないですが、レースがレースだけに残念です」
レース後にこう明かした武豊。ジョッキーが振り返った通り、天皇賞・秋のような出負けもなく、絶好のスタートで先手。「楽に行けるようなら」と好枠の2枠4番からスッとハナを取り、前半1000メートル60秒2という絶妙なペース配分でレースを支配していた。昨年の再現と、多くのファンが思っただろう。しかし、ラスト1ハロンを迎えて、いつものようなキタサンブラックの粘りがない。
「アレッ?っていう感じがあったので、レース後に『落鉄してない?』って聞いたんです。違和感というか、そんな気配を感じました。意外と伸びなかったから、落鉄しているんじゃないか……って」
勝負の世界に“たら・れば”を持ち込んではいけないことは重々承知。武豊自身、「これも競馬です」と、キッパリと今回の敗戦を受け止めている。しかし、落鉄の多くのケースがそうであるように、今回のキタサンブラックもスタート直後の落鉄だったとしたら、あまりに不運……と思わずにはいられない。それくらい“負けて強し”の3着だった。
「改めて全部勝つのは難しいと思いましたが、有馬記念はラストランになるので、是が非でも勝って終わりたいですね。それだけの馬ですから」
秋GI全勝とはならなかったが、武豊がすでに前を見据えているように、次は現役最後のレースとなる有馬記念だ。一昨年3着、昨年2着と、もう一歩のところで逃しているグランプリタイトル。現役最強馬の称号をさらに輝かせるためにも、ここは何としても勝って有終の美としたい。イブ決戦までのキタサンブラック引退カウントダウンは、同時に逆襲のカウントダウンとなった。
姉、妹に続く待望のビッグタイトル
キタサンと同世代のシュヴァルグランが遅咲きのGI初勝利! 【写真:中原義史】
「この馬の適性を考えると、2000メートルでは短いと思ったんです。オーナー(佐々木主浩氏)ともジャパンカップ、有馬記念を勝ちたいという話をして、京都大賞典から4戦は厳しいから、天皇賞・秋をパスしてジャパンカップ、有馬記念に行こうとなりました」と友道調教師。昨年はアルゼンチン共和国杯から中2週の押せ押せだったが、今年は違った。春の疲れをしっかり取った上で迎えた中6週での秋2戦目。
「昨年と違って、今年は完ぺきな状態で秋の初戦を迎えることができましたね。その後も順調に来ていたので、自信を持って臨むことができました」
サトノクラウンとの兼ね合いでジョッキーが難航したが、ここで迎えたボウマンが完ぺきな仕事をこなしてくれた。オーストラリア出身の37歳で、16/17年シーズンのオーストラリアNSW地区リーディングジョッキー。さらに、GI・15勝を含む22連勝中の名牝ウィンクスの主戦としても活躍し、世界で最もレーティングの高いG1競走100レースを対象として争われる「ロンジン・ワールドベストジョッキー」の2017年チャンピオンジョッキーにも輝いた、今一番ホットな名手だ。
「実は追い切りで初めて乗ったときは、コレといった凄さを感じたわけではないんです」と、ファーストコンタクトの印象を語ったボウマン。しかし、厩舎スタッフから「芝に乗ると馬が変わる」とアドバイスを受け、「去年のジャパンカップの映像を見て、すごい馬だと分かった。しかも、その去年よりも状態が良いということだったので、それなら!という気持ちになったんです」。