豪雪地帯だからこそできる旭川実業の強化 「北海道のサッカー」で全国区に

安藤隆人
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富居監督が抱く積年の思い

今夏のインターハイで北海道勢として23年ぶりのベスト8進出を果たした旭川実業(白)。選手権での活躍に期待がかかる 【安藤隆人】

 全国高校サッカー選手権大会の北海道代表は2年連続で旭川実業となった。決勝戦で北海道大谷室蘭を3−0で下し、勝ち名乗りを挙げた同校を率いるのは富居徹雄監督。今年で就任24年目を迎える富居監督の口癖は「北海道のサッカーを変えたい」だった。

 これまで室蘭大谷(現北海道大谷室蘭)、北海、帯広北などが活躍を見せていた北海道の高校サッカーに風穴を開け、2000年度に選手権初出場。それ以降はインターハイ(全国高校総合体育大会)、選手権、プリンスリーグ北海道でコンスタントに結果を残し、12年には高円宮杯プレミアリーグイーストに参戦。今年のインターハイでは北海道勢として23年ぶりのベスト8に食い込んだ。

 富居監督が目指すのは、「北海道を制するとかではなく、あくまで高校、Jユースも視野に入れて、全国でいかに対等に戦えるか」ということ。

「特に激戦区の関東や関西のチームと当たり前のように対等に戦えないといけない。常に道外に目を配って取り組まないと、北海道は取り残されてしまう」

 指揮官は北海道スタンダードではなく、常に全国スタンダードで物事を考える。全国で通用する選手の育成を頭に入れて地道に指導をしていかないと、北海道のレベルが下がってしまう。現にかつて北海道は室蘭大谷を中心に、全国トップレベルの力を有したチームがそろい、これまで財前恵一(室蘭大谷卒、現札幌国際大サッカー部監督)、野田知(室蘭大谷卒、現ヴィッセル神戸U−18監督)、山瀬功治(北海卒、現アビスパ福岡)など技術の高い多くの人材を世に輩出した。しかし、コンサドーレ札幌の下部組織が成熟してくると、多くのタレントがコンサドーレに流れ、北海道の高体連(全国高等学校体育連盟)はトーンダウンしていく。

 しかし、北海道にJユースは1つしかない。「だからこそ、われわれ高体連がもっとしっかりしないと、北海道の選手達は育たない。もっとそれぞれカラーをしっかりと打ち出して、全国的な視野でサッカーをしないといけない」と、富居監督は自らの役割の重要性と危機感を抱いた。そして、数年前から「北海道のサッカーを変えたい」という言葉を発するようになったのだった。
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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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