ドイツ2部へ移籍した宇佐美貴史の決意 フォルトゥナで感じる気持ちの変化

高木直人

「試合でしか存在価値を示せない」

宇佐美が新天地に選んだのはブンデスリーガ2部のフォルトゥナ。とにかく自分の存在価値を示したいという思いで移籍を決意したという 【高木直人】

 日本代表の命運をかけたワールドカップ(W杯)ロシア大会・アジア最終予選のオーストラリア戦。2−0で勝利し6大会連続の出場を決定づけた井手口陽介のゴールを、宇佐美貴史はインターネットのニュースで確認した。ガンバ大阪時代のかわいい後輩が決めたゴールをどのような心境で知ったのか。

 宇佐美は「かわいくはないですけどね」と笑いながら前置きをし、「出場を決める点を決めてくれたというのは、ありがたい刺激を後輩からもらえたなと思います。やっぱり、ああいうステージに自分自身も立ちたいので、そのためには(自分が)このチームでどうするかというのを強く思わせてくれたゴールだったのかな」と答えた。

 宇佐美が今季、新天地に選んだのはドイツ中西部にあるデュッセルドルフを本拠地とするブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフ。昨シーズンは終盤に残留争いに巻き込まれたが、今シーズンはここまで好調を保ち、5節を終えて首位につけている。

 宇佐美がフォルトゥナへ移籍を決めたのはW杯本大会が迫る中で、とにかく自分の存在価値を示したいという強い思いだった。「試合に出たかったというところだけですね。そのチャンスが大きくなるクラブに、カテゴリーを落としてでもいく必要があったのかなと思っています。サッカー選手である以上、試合には出ないといけないというのは誰しもが分かっていることですし、試合でしか存在価値を示せないと思うので」

 移籍にはバイエルン・ミュンヘン時代の恩師で、現在フォルトゥナのコーチを務めるペーター・ヘルマン氏の存在も大きかったという。「(バイエルンで)1年間、一緒にやっていました。バイエルンを離れた後も、ずっと僕のことを気にかけてくれていたようです」

自分でも驚くほど「打たれ強くなっている」

 実は1度目のドイツ挑戦を終えて日本へ帰国した後、もう一度ドイツで戦おうと宇佐美は心に決めていた。

「1回目は苦しい状況が多かったです。その中で(日本に)帰って、もう1回(ドイツに)行くというのは決めていました。それが実現はできたけれど、試合に出て活躍するというのが一番のテーマだったので、そこがなかなかうまくいかなかった」

 アウクスブルクに移籍した昨年はチームのサッカーにうまくなじめず11試合出場ノーゴール。「前線でボールを追いかけていただけでしたから」と昨シーズンを振り返る。

 しかしそんな中でも宇佐美は自身との向き合い方を身につけ、メンタル面の向上を感じるという。

「自分自身と向き合うことが多かった。そういう部分で一概に強くなったということではなくて、精神的にいろいろな状況になることが多い中で、もちろんどん底の時もあれば、プレーしている時は充実感も得られる。その両方を感じながら、自分はどうすべきなのかを考えられるようになっていると思います」

 さらにこう続ける。

「うまくいっていれば何でもうまくいき出すと思うんですけれど、その時は精神的にも充実感があります。そういう充実感がなくなってきた時に、自分を成長させるためにどうやって自分と向き合って、自分自身に対してどんな言葉を投げ掛けるのかが大事なんじゃないかと思います。

 いつもどんな状況であれ、毎回『今日こそは』というメンタリティーでいます。メンタルが折れかけた時も、それでも強く思い続けることはできているので、われながらこんなに強い気持ちがあるんだと、自分自身でも驚くことがあります。いい意味でも打たれ強くなっているなと感じています」

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著者プロフィール

1977年6月14日生まれ。日本大学卒業後、信越放送にアナウンサーとして入社。ラジオとテレビで主に生中継担当として番組に携わる。2010年からはJFLに昇格した松本山雅FCの担当としてクラブ応援番組のディレクター兼レポーターを務め、松本山雅のJ2昇格に立ち会う。その後、スカパー!で松本山雅の実況を3年にわたり担当。14年には実績を認められヨーロッパリーグの実況を担当する。37歳でゼロから独学でドイツ語の勉強をスタートし、1年半で「Goethe Institute B1-gut」を取得。17年4月からケルン体育大学・準備コースへ入学し、ドイツで活躍するスポーツ選手の取材に当たっている

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