アウクスブルクで鍵を握る宇佐美の存在 新監督の下、攻撃サッカーへ舵を切る
監督交代により、チームに変化
クリスマス前までは、何かと忙しかった。バウムが後を継ぐ前には当然、前任者の解任があり、ディルク・シュスターがクラブを去っていた。試合の予定も詰まっていた。バウムが初めて通常のトレーニングを1週間フルにこなすことができたのは、ようやく1月に入ってからのことだった。自分のチームに、やっと自身のアイデアを示すことができるようになったのだ。
1月20日に、ドイツ・ブンデスリーガのシーズン後半戦がスタートする。仕切り直しの一戦の相手は、ホッフェンハイム。リーグで唯一、今季まだ黒星を喫していない厄介な相手だ。
一方で、バウムも負けてはいない。チームを預かってからの2試合で、アウクスブルクは土をつけられていない。昨年末の2試合で、チームとともに4ポイントを稼いでいるのだ。この勝ち点がクラブからの信頼につながり、正式に新監督として契約するに至った。
監督交代により、チームには変化が見られる。これまでの数カ月間と比べて、チームはより能動的に、そして活発にプレーをするよう促されている。それがバウムの目指すところだ。
超守備的だったシュスター前監督時代
だからこそ、余計に気になるのが得点力だ。リーグ戦において1試合で複数得点を奪ったことは、まだ2回しかない。これこそが攻撃面をおろそかにしていたことを示すものであり、シュスター前監督がクラブを去らねばならない理由となった。
バウムを正式に監督として迎えたことにより、アウクスブルクはブンデスリーガの全般的なトレンドにならうこととなった。ドイツでは、クラブでは外部に解決策を求めるよりも、内部の人間の方を信頼する傾向にある。
バウムはアウクスブルクのユースチームで2年半の間、監督を務めてきた。自身の哲学を、『キッカー』誌にこう語っている。
「守備においては、アグレッシブな姿勢で輝きを放たなければならない。守りたいのではなく、ボールを握りたいんだ。ボールを奪うことができたなら、できるだけ早く相手のゴールに向かってカウンターを仕掛けたい。試合を組み立てるにあたって良いプレーをしたいし、意図のあるサッカーをしたいんだ。ボールを失ったら迅速に取り戻したい」
この中断期間中にキャンプを行ったスペインで、バウムは自身のビジョンの詳細をチームに示し、「技術的には、今のわれわれは基盤ができている」と自信をのぞかせた。そして、「これからは毎週、相手が何をしてくるのかを見極め、それに適応していかなければならない」と展望を描いた。
ワインツィアルのシステム復活へ
「シュスターの下で、チームは非常に一般的ではないプレースタイルに取り組んでいた。とにかく守備に気を使い、失点しないことに注力していた。非常に冷静なことで知られるアウクスブルクのファンでさえ、試合が始まって20分も過ぎるといら立つようになり、指笛を鳴らし始めた。見るに耐えないサッカーだったよ。
以前に指揮を執り、現在はシャルケで働くマークス・ワインツィアルが率いていたころにも、ひどい試合というのはあった。でも、ファンはいつだって、選手たちが攻撃面で常に良いプレーをしようとしていることを理解していた。シュスターがいた時には、そんなことは全くなかった」
ワインツィアルは、チームに自身のビジョンを伝えるだけではなく、クラブ全体にそれを植え付けていった。14歳以下のユースチームにおいても、彼の考え方はすぐに浸透した。素早くプレスをかけて、攻撃ではウインガーを活用するというものだ。23歳以下のチームを預かったシュスターもまた、ワインツィアルの戦術を尊重することとなった。
バウムが就任したことで、クラブ上層部はワインツィアルのシステムが復活することを願っている。「バウムはサッカー狂さ」とアルトシェフル記者は言う。「彼は僕らに自分のサッカー観を伝えたいと思っていて、たくさん説明してくれるんだ。新しいメディアを活用して、ガジェットなども多用する。どうすればすべての選手と、個々に意思疎通が図れるかを理解しているのさ。だから一部の選手にはiPadも使うし、別の選手たちにはボードに書いて教えたり、パワーポイントも使ったりする。ディテールにまでこだわることが好きなんだ」
バウムは教育者である。だが彼にとって最大のチャレンジは、教師としてチームを掌握する、ということにはならないだろう。自分の学生時代のころを思えば、誰でも分かることだ。生徒を一番うまく動かす教師が、必ずしも一番人気というわけではない。アルトシェフルは、この点がバウムにとって一番のワナになり得ると見ている。
「選手として、ワインツィアルはすごいキャリアを築いたわけではない。だから、違う形で選手たちからの敬意を勝ち取る必要がある。でも、その点に関しては、非常にうまくやっていると思うね」