ドイツ2部へ移籍した宇佐美貴史の決意 フォルトゥナで感じる気持ちの変化

高木直人

チームになじむにつれて思うこと

チームメートの特徴も少しずつつかみ始め、デビュー戦では移籍後初ゴールを決める活躍を見せた 【写真:アフロ】

 チームに加入して1週間、チームメートの特徴も少しずつつかみ始めてきた。「うまい選手がやっぱり多いですし、特に真ん中にうまい選手がいてくれるというのはボールもいっぱい動きますし、ボールを保持できる。保持するためには真ん中の機動力だったり、真ん中のうまさが必要なので、うまくボールを持って引き出しながらっていうイメージは持っています」

 コツコツ勉強し「ひどいドイツ語っすよ」とは言いながらも、ドイツ語でインタビューに答え、チームメートとのコミュニケーションも取れるようになってきた。そうしてチームになじんでいくにつれ、自身のサッカー観にも変化が表れてきているようだ。

「チームのスタイルによっても変わってきますが、中盤に右利きの選手が多いと無意識で右に右にと動いていくことが多いんです。それは左で蹴るよりも持ちやすいから。全体的に右寄りになっていく中で、左サイドはなかなかボールに絡めないことが多くあります。そうなってくると、真ん中の方が(多くボールに触れるので)いいなと思ったり、真ん中の方が自分の良さを出せるんじゃないかと思うことが多くなってきました」

これ以上ない結果となったデビュー戦

 1度目のドイツ挑戦の時にはいなかった、新しい家族の存在も宇佐美を支えている。

「(1度目の挑戦の時とは)子供がいたりと環境が変わっています。今は応援してくれている人、支えてくれている人の存在の大きさを感じながらやれています。そしていい意味で、過度に自分自身に期待しないようになりました。まったく期待しないわけではないんですけれど、過度にするとプレッシャーにもなりますしね。やるべきことに集中しながら、熱くはいたいですけれど、平常心でやりながら、というイメージです。マイペース、ゆったりという意味ではなくて、自分なりのマイペースを貫きながら、どんどん成長にしていけたらと思います」

 宇佐美の加入は、チームだけでなくデュッセルドルフに住む日本人にとってもうれしいニュースとなった。多くの日本企業が集まるデュッセルドルフには約7000人の日本人が住んでいると言われており、宇佐美のデビュー戦となった10日のウニオン・ベルリン戦には、多くの日本人サポーターが背番号「33」の入ったユニホームを身にまといスタジアムに駆け付けた。

「マッチアップできればうれしいです」と話していた内田篤人が加入したウニオンとの戦いではベンチからのスタート。宇佐美の出番がきたのは1−1で迎えた後半29分。さらにその直後に内田にも交代が告げられ2人の対決が実現した。

 宇佐美が右の2列目、内田も本来のサイドバックではなく、右サイドの1列前に入ったため、2人がマッチアップすることは残念ながらなかった。しかし後半33分に内田が鋭い反転から低いクロスを送ると、相手のオウンゴールを誘いウニオンが2−1と逆転に成功。その6分後に宇佐美が相手のクリアボールに誰よりも早く反応すると右足を鋭く振り抜き同点ゴールを決め、日本人が多く座る観客席からはこの日一番の歓声が送られた。その後、試合終了間際に逆転に成功したデュッセルドルフが3−2で勝利し首位をキープ。宇佐美にとっては最高のスタートとなった。

 W杯本大会まで300日を切った中、代表復帰への望みをかけて宇佐美の重要なシーズンが始まった。

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著者プロフィール

1977年6月14日生まれ。日本大学卒業後、信越放送にアナウンサーとして入社。ラジオとテレビで主に生中継担当として番組に携わる。2010年からはJFLに昇格した松本山雅FCの担当としてクラブ応援番組のディレクター兼レポーターを務め、松本山雅のJ2昇格に立ち会う。その後、スカパー!で松本山雅の実況を3年にわたり担当。14年には実績を認められヨーロッパリーグの実況を担当する。37歳でゼロから独学でドイツ語の勉強をスタートし、1年半で「Goethe Institute B1-gut」を取得。17年4月からケルン体育大学・準備コースへ入学し、ドイツで活躍するスポーツ選手の取材に当たっている

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