東芝ラグビー部、苦境からの復活なるか リーチ「原点は忘れてはいけない」
選手に「東芝らしさとは?」とアンケート
フィジカルトレーニングだけでなく、コンタクトやフィットネスのトレーニングも継続的に行っている 【斉藤健仁】
4月には選手たちに「東芝らしさとは?」というアンケートを取った上で、決定した「STAND UP」というスローガンに、今の思いが集約されている。昨シーズンの9位という低迷から「立ち上がる!」という強い思いと、かつて、TLを席巻した「スタンディングラグビー」への回帰を表現したもの。
「昨シーズンはどういうラグビーをしたいか、あまり共有できていなかった。ほとんどの選手が、かつて強かったときのラグビーを見て、東芝に入ってきている。だから接点でボールを(立ったまま)動かすラグビーをしたいと思った。ただ、昔に戻すだけでなく、新しいこともやっていかないと勝てない。どうみんなで作っていくかが大事です」(瀬川監督)
練習試合は5勝1敗と好調「メンタル面も充実している」
立ってボールをつなぐ「スタンディングラグビー」を目指す 【斉藤健仁】
大野が「優勝を知っているスタッフが一貫性を持って指導しているし、メンタル面も充実している」と言えば、湯原は「ルール変更もあったので、スクラムの練習時間は増えました。また戦い方がガラッと変わりました。アタックではひとりひとりの立つ意識が高くなった。ディフェンスは流すのではなく前に出る。しっくりきています!」と自信をのぞかせた。
春から練習試合は5勝1敗と、結果は残せている。昨シーズンの王者でライバルのサントリーに対しては2勝1敗と互角以上に戦い、台風の目になるかもしれないトヨタ自動車、トップ4常連の神戸製鋼に勝ったことは自信につながったはずだ。特にボールキャリアは力任せに当たるのではなく、少しずらし、そしてオフロードも積極的に使うなどの工夫は試合の中で顕著だった。
「スポーツで頑張ることが企業スポーツの価値」
激しい練習を楽しく行う「東芝らしさ」が戻ってきている 【斉藤健仁】
シーズン前に中心選手が2人移籍し、新しい外国人選手の加入はゼロ、大卒新人の加入は2人のみと、やや厳しい環境に置かれていることも間違いない。そんな中でも、ラグビーに集中できる環境を用意してもらっている会社に対し、瀬川監督は「こうして変わらず、継続してラグビーを強化していただき、感謝しています」。
また監督が「こういう時期なので、ラグビーを通じて明るい話題を提供したい」と言えば、選手たちは「社員を元気づけたい」と声をそろえる。そして廣瀬BKコーチは「今まで、ラグビー部でいろんなことがあったとき会社が守ってくれた。今は会社が大変なときなので、スポーツで頑張ることが企業スポーツの価値だと思います」と、ラグビー部の存在意義を説いた。
本人もTLでの優勝経験のないリーチは「東芝らしい、立ってつなぐスタイルが戻ってきた。優勝した経験をした選手が少なくなってきたので、(勝つ文化を)残さないといけない」と危機感をあらわにした。瀬川監督は「チームの雰囲気はいいですが、優勝を口にすることができるチームになれているかまだわからない。一つ一つ戦っていきたい」と言うものの、「スタッフがそこ(優勝)を見ていかないと勝てるわけがない」と、狙うはもちろん、09年以来、6度目となるタイトル奪取だ。
8月19日にNECとの開幕戦を迎える東芝は、競争が激しい「レッドカンファレンス」に入り、序盤で強豪との対戦が続く。常勝軍団復活を懸けるだけでなく、苦境に立たされている社員や関係者の思いも背負って戦うことになるはずだ。
チーム名のブレイブは「勇敢な」、ルーパスは「オオカミ座」を意味する言葉である。TLで強いブレイブルーパスが復活し、東芝を応援する関係者やファン全員の“輝く星”となれるか。