東芝ラグビー部、苦境からの復活なるか リーチ「原点は忘れてはいけない」
5回のTL制覇も、昨季は9位に低迷
雨の中で円陣を組む東芝の選手たち。復活に向けて激しい練習を続けている 【斉藤健仁】
8月18日に、15年目を迎える日本ラグビー最高峰の「ジャパンラグビートップリーグ(以下TL)」が開幕を迎える。16チームが参戦する中でサントリー、ヤマハ発動機、パナソニックあたりが優勝候補として挙げられる。そんな中、9位からの王座奪還を目指すチームがある。それが最多優勝5回を誇る東芝だ。
一昨季、あと1本ゴールが決まっていたら優勝だったかつての常勝軍団は、昨シーズン、明らかに不調だった。過去14年間、唯一、トップ4に入り続けていた姿はそこにはなく、上位チームには歯が立たず、宗像サニックス、豊田自動織機などにも黒星を喫して6勝9敗で9位に沈んだ。
メンバーを見ればFLリーチ マイケルを筆頭に日本代表やオールブラックス経験者らがおり、本社が経営難の中で、その影響が戦力にあったかといえば、そう多くなかったと言えよう。一方で、ラグビー部強化の形が変わる可能性もあったため、これまでのシーズンに比べて選手が不安を感じていた部分もあっただろう。
代表に多くの選手が招集されるも「言い訳にできない」
日本代表でも活躍するリーチは「原点は忘れてはいけない」と語る 【斉藤健仁】
しかし、代表に多くの選手が取られることは、他の強豪チームも同じで、チームの「顔」であるLO大野均は「言い訳にできない」とキッパリ。リーチも「ヤマハ発動機など他のチームも強くなってきたので、もうフィジカルに頼ることができなくなった。でも原点は忘れてはいけない」と冷静に分析していた。
また一昨季はフィジカル重視であと一歩で優勝できなかったこともあり、昨季はその部分をより上げていくことよりも、「ポッド」でボールを大きく動かし、スピードあるラグビーに新たな活路を見出そうとしたが、うまくはまらなかった。
瀬川監督の心に刺さったエディー・ジョーンズの言葉
7人制日本代表をリオ五輪4位に導き、今季から古巣に戻った瀬川監督 【斉藤健仁】
7人制の指揮官になるまで、東芝というチームの外に出たことがなかったという瀬川監督は「ラインアウトのコールの仕方ひとつとってもチームによって違っていたことに驚きました。いろいろ学びました」と振り返る。中でも、日本代表の元指揮官だったエディー・ジョーンズ氏の言葉が心に刺さる。「エディーさんに言われたのが、『スタッフも世界一にならなければ世界トップクラスになれない』ということでした。だから、東芝もスタッフが日本一にならないと日本一になれないという気持ちでやっています」(瀬川監督)
実際、1年間のスケジュールやプランニング、試合への持っていき方など、いろいろと変化を加えているという。また監督は外国人コーチだけでなく、猪口拓FWコーチ、廣瀬俊朗BKコーチと代表を経験し、黄金期を支えた人材で脇を固めた。またキャプテンにはオールブラックスでワールドカップ優勝を経験した、来日5年目のCTBリチャード・カフイ、副キャプテンには12年目のベテランHO湯原祐希と昨季までキャプテンだったSO/CTB森田佳寿を指名。どんな時でも体を張れる選手がそろった。
攻守にわたって中軸となるCTBカフイは外国人選手ながらキャプテンになった思いを「チームの環境が大きく変わる中、キャプテンのオファーを受けて、光栄だと思いました。昨シーズン、残念な結果に終わったので、チーム全体を変えなければならない。そのプロセスをスピードアップし、助けたい。そのためには選手ひとりひとりが変わっていく、進化しないといけない。瀬川監督と選手とつなげたい」と吐露した。