初開催となったU15チャンピオンシップ Bリーグが模索する日本バスケの底上げ策

大島和人

FE名古屋U15が初代王者に

BリーグU15チャンピオンシップの初代王者に輝いたFE名古屋U15 【(C)B.LEAGUE】

 8月1日から「BリーグU15チャンピオンシップ2017」が大阪市内で開催されていた。Bリーグのユースチームにとっては初となる本格的な全国大会を制したのは、Fイーグルス名古屋U15。3日の決勝戦ではFE名古屋がU15横浜ビー・コルセアーズを61−49で下し、初代王者に輝いている。

 うれしい発見の多い大会だったが、関係者の取材をする中でさまざまな課題も浮かび上がってきた。

 ポジティブな要素は才能あふれる選手たちのプレーと、力の入った大会運営だろう。FE名古屋は191センチの河合海輝、190センチの中川泰志、185センチの深津章太と大型選手を擁し、それぞれ個の力が光った。しかも大型選手が先につながるオールラウンドなプレーを見せていた。

 青木幹典ヘッドコーチ(HC)は「サイズのある選手にアウトサイドからのプレーを覚えてもらいたいということで、フォーメーションなどを作ってきた」と戦術的な狙いを説明する。特に中川は決勝戦の32分間(1ピリオド8分)で9本の3ポイントシュートを放ち、そのうち5本を成功。1試合で合計21点を決め、大会のMVPにも輝いた。

 横浜の白澤卓HCも「3ポイントはある意味でドライブより怖くないから『そこはいいよ』と言っていたけれど、しっかり決めてこられた。それが痛かった」と決勝戦を振り返る。横浜は相手の高さを封じる組織的な守備をよく機能させていたが、FE名古屋はアウトサイドのオプションでそこを上回った。

 またプレーを後押しする演出面は想像以上に華々しいもので、3位決定戦と決勝戦は大阪エヴェッサも使用している府民共済SUPERアリーナのセンターコートで開催された。得点の表示や大型ビジョンを用いたプレーの再生、場内の照明と音響は完全にBリーグ仕様。シュートが決まればMCは選手名をコールし、ハーフタイムは西宮ストークスと京都ハンナリーズのチアスクールの生徒たちが踊っていた。totoの支援事業となったこともあり、Bリーグの公式戦と遜色ない予算もかけられていた。

 開催に尽力したBリーグ強化育成部の塚本鋼平氏は「Bリーグとしても本気なんだというところが皆さんに分かっていただけたら」と述べつつ、こう収穫を口にする。
「多くのBリーグのチームがU−15の設置に向けて必死になっているのは確か。子供たちも勝った負けたで涙を流して、思いがここに出てきた」

 FE名古屋の深津も「シュートを決めた後はすごく気持ちよくて、『次も決めてやる』という気持ちがいつも以上に出た」と語っていた。選手にとっても強烈な環境だったはずで、今後はこの大会が中学生の大きな憧れとなっていくのだろう。

多くの選手が部活とクラブを掛け持ち

 期待感を抱かせる存在であるBリーグクラブのアカデミーだが、まだ未整備な部分も多く、力の入れ方もクラブによってそれぞれだ。今大会は15チームの参加があったものの、東北と北海道のクラブは費用面などの問題もあって出場していない。チームの活動日数も栃木ブレックスU15は週5回だがそれは例外的な多さ。4強に残ったチームも横浜は週3回、滋賀レイクスターズU15は週2回で、FE名古屋に至っては「トライアウトを終えてから3回しか練習ができていない」(青木HC)という速成チームだった。

 中学生年代はBリーグU−15チャンピオンシップの他に、2つの全国タイトルがある。1つは春休みに開催される都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(ジュニアオールスター)で、これは選抜チームによる日本バスケットボール協会(JBA)主催の全国大会だ。もう1つは夏休みに開催される全国中学校体育大会(全中)で、これは部活単位の大会だ。

 FE名古屋の河合、中川、深津はジュニアオールスターでも全国の大舞台を経験している。栃木から大会ベスト5に選ばれた御堂地香楽も、中1(新中2)ながら今春のジュニアオールスターで栃木県選抜に選ばれていた。そういう才能がU−15チャンピオンシップにも出場していた。

 ただしバスケは中学生年代のプレーヤーが部活とクラブを掛け持ちする。そこがサッカーや野球といった他競技との違いだ。サッカーは制度として二重登録を禁じている。野球もクラブチーム(一般的に硬式)と中体連(軟式)は用具が違い、掛け持ちは一般的でない。

 しかしバスケは多くの選手が部活とクラブを掛け持ちし、現状では部活が優先されている。それは横浜、栃木のような有力クラブでも変わらない。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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