鈴木彩香、W杯を「人生最高の瞬間に」 新境地を切り開く女子ラグビーの“象徴”
初挑戦のFLは「動いたら動いただけボールが持てるので楽しい」
7人制ではリオ五輪に出場。海外勢との対戦経験は豊富だ 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「FLとしての初めての試合が、海外のチームとの対戦だったので緊張しましたね。ただ、試合でプレーすると『こうなんだ』と思えるようになった。FLは、試合中、サボることができず、動いたら動いただけボールが持てるので楽しい! (相手のボールを奪う)ジャッカルにもチャレンジしています。ボールが取れたり、取れなかったり、テクニック的にこのタイミングではいける、いけないというもわかりました」(彩香)
また、あらためて15人制ラグビーの魅力を再認識している日々でもある。
「セブンズは身体能力に頼ることがすごく大きいですが、15人制は、より一人では何もできないことを痛感しています。一人ひとりが100%以上のことができるか、そして行動、言動でチームの結果が変わってくる。みんなと成長しながら、一つにまとまっていくのがいいですね!」
加藤慶子「彩香がいると安心します」
笑顔でW杯に臨む鈴木彩香(左)と加藤慶子 【斉藤健仁】
そのため彩香は「自分にとっての一番の理解者で、一緒に日本の女子ラグビーとともに成長していった選手が、この場にいないのは寂しい」と言いつつも、「ずっと戦ってきた、(一つ学年は上だが)同期みたいな(CTB加藤)慶子ちゃんがいるのはうれしいし、若い選手とプレーするのは新鮮です」と前を向いている。
リオ五輪では、バックアップメンバーとなり遠征メンバーの中で唯一、出場できなかったCTB加藤は「本当にうそのようで、やっとW杯まで来た。前々回のW杯アジア予選は彩香がSOで私がインサイドCTBでしたね。今は、彩香はFWになっちゃいましたが(苦笑)、すごく嗅覚がよくて、今、投げていいよとかスモールトークをしてくれるので、やりやすい。彩香がいると安心します!」と10年来、ともに女子ラグビー界を支えてきた彩香に絶大な信頼を置いている。
また若手選手の多くは、ユース世代からセブンズも含めて代表に選ばれて、世界と戦っている選手が多いものの、「試合をコントロールするのはベテランの役目」と彩香は自分のベテランとしての立場もわきまえている。
対戦相手はいずれも格上。歴史的勝利なるか
「15人制ならではの魅力はあるので、それをわかってもらうには結果を残すしかない」 【斉藤健仁】
当初は「45歳までプレーしたい」と思っていたという彩香はコーチもやりたいと思っているため、「1年1年が勝負だけど、自分の中では東京五輪まではプレーしたい」。ただ「オリンピックでブームみたいなものが来て女子ラグビー人口も増えたけど、15人制はやっぱり15人制で切り開いていかないといけない。あまり、今回注目されていないですが、15人制ならではの魅力はあるので、それをわかってもらうには結果を残すしかない」と意気込んでいる。
4大会ぶりの出場となったサクラフィフティーンにとって、今回のW杯は、初めて男子と同じジャージーで臨む大会となる。10年以上、女子日本代表として体を張り続けている彩香にとっても初めての15人制W杯である。新人FLとして新境地を開きつつあるベテラン“ラガール”は、「日本ラグビーの歴史を変えて、リオと違って、人生最高の瞬間にしたい!」と、その大きな瞳を輝かせた。