【ボクシング】体重の壁を越えたメキシコのスター対決 カネロ・アルバレス対チャベス・ジュニア

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メキシコ出身のスター同士の対戦となるカネロ(左)とチャベス・ジュニアの一戦が日本時間7日にラスベガスで行われる 【Getty Images】

 154ポンド(約69.8キロ)が体重上限のスーパー・ウェルター級で、WBO(世界ボクシング機構)王座に君臨するサウル・カネロ・アルバレス(26)と、元WBC(世界ボクシング評議会)ミドル級(160ポンド≒72.5キロ以下)王者、フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(31)によるメキシコのスター選手同士の対決が現地時間5月6日(日本時間7日)、米国のネバダ州ラスベガス、T−Mobileアリーナで行われる。

 現在、チャベス・ジュニアはスーパー・ミドル級(168ポンド≒76.2キロ以下)でWBC6位にランクされているように、直近の5試合は約76キロ以上で戦っている。本来ならば両者は2階級異なるわけだが、今回は両陣営の合意によって164.5ポンド(約74.6キロ)以下の契約体重で行われる。

 総合力ではアルバレスが上回っているが、体格差が勝負に大きな影響を及ぼす可能性もある。最高1500ドル(約16万3500円)をはじめ2万2000枚余のチケットが試合2カ月前に完売になるほどの注目ファイト。はたしてどんな歴史が刻まれるのだろうか。

体格差のある冒険マッチの数々

 130年ほど前までボクシングは体重無差別で行われていたが、公平を期すために階級制が採られるようになった。その結果、現在では最軽量のミニマム級(105ポンド≒約47.6キロ以下)から最重量のヘビー級(200ポンド≒90.7キロ以上)まで体重別に17クラスに細分化されている。

 それでも、ときとして体重の壁を超越したスター選手同士の冒険マッチが組まれることがある。古いところで有名なのは1909年のジャック・ジョンソン(米国)対スタンリー・ケッチェル(米国)の世界ヘビー級タイトルマッチであろう。

 4度目の防衛を狙うジョンソンは約93.2キロ、挑戦者の世界ミドル級王者、ケッチェルは約77.2キロ、体重差は16キロもあった。ケッチェルは12回にダウンを奪う健闘をみせたが、これで火がついたジョンソンが同じ回にダウンを奪い返し、ミドル級王者を退けている。

 1988年には、当時のスーパースター、シュガー・レイ・レナード(米国)が2階級上のライト・ヘビー級(175ポンド≒79.3キロ以下)王者、ドニー・ラロン(カナダ)に挑んだ。空位のWBCスーパー・ミドル級王座の決定戦も兼ねた変則マッチだったため76.2キロ以下の体重で試合は行われた。

 体格で大きなハンデのあったレナードは4回にダウンを喫するなど苦戦を強いられたが、9回に2度のダウンを奪ってTKO勝ち。一気に2階級の王座を獲得し、史上初(当時)の5階級制覇を成し遂げた。

デラ・ホーヤ対パッキャオのスター対決も

 21世紀に入ってからは階級を超えたスター選手同士の対決が増えた。

 最もファンを驚かせたのは08年12月のオスカー・デラ・ホーヤ(米国)対マニー・パッキャオ(フィリピン)戦ではないだろうか。すでにミドル級まで上げて6階級制覇を成し遂げていたデラ・ホーヤと、前戦でWBCライト級(135ポンド≒61.2キロ以下)王座を獲得したばかりのパッキャオが拳を交えたのだ。

 過酷な減量を強いられたデラ・ホーヤが145ポンド(約65.7キロ)だったのに対し、パッキャオは増量したものの142ポンド(約64.4キロ)までしか上がらなかった。加えて身長差は13センチ、リーチ差は15センチもあった。体重制競技の根幹を揺るがすような仰天マッチメークだったが、試合ではパッキャオがスピードで圧倒、稀代のスーパースターを8回終了で棄権に追い込んだ。

 昨年5月、アルバレス自身が体格差のある試合を経験している。そのときのアルバレスはWBCミドル級王者で、挑戦者は元スーパー・ライト級(140ポンド≒63.5キロ以下)王者のアミール・カーン(イギリス)だった。当時のカーンはウェルター級で世界王座を狙っていたが、それでも両者の体格差は歴然だった。そのため試合は155ポンド(約70.3キロ)の契約体重で行われた。アルバレスは挑戦者のスピードに苦しんだが、6回に強烈な右を叩きつけてカーンを失神させた。

 その4カ月後、IBFウェルター級王者のケル・ブルック(イギリス)がゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)の持つミドル級王座に挑んだが、こちらも善戦はしたものの5回TKO負けを喫している。ちなみにブルックは試合後に眼窩低(がんかてい)骨折が判明、手術を受けることになった。

 今年3月にはWBCクルーザー級王者のトニー・ベリュー(イギリス)が、元クルーザー級、ヘビー級王者のデビッド・ヘイ(イギリス)と対戦。5対1で不利とみられたベリューだが、体格のハンデを跳ね返して11回TKOで勝利を収めている。

 こうしたデータを見る限り、必ずしも体の大きな選手が絶対的に有利とはいえないことが分かる。基本的な力量に加え、その試合がどちら寄りの条件で行われたかという点にも注目する必要があるからだ。ただ、大まかな傾向として分かるのは、体格で勝る選手はそのアドバンテージを生かしてパワーで勝負する傾向が強く、小さい者はスピードで勝負するという点である。

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