【ボクシング】怪物王者ゴロフキンに見えた衰えの兆候 ミドル級“スターウォーズ”本格開戦か
連続KO記録は23でストップ
ミドル級統一王者のゴロフキンはジェイコブスに判定勝ち。ベルトは守ったが、連続KO記録は途絶えた 【Getty Images】
現地時間3月18日(日本時間19日)、米国ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで行われたプロボクシングのWBA、WBC、IBF世界ミドル級タイトル戦で、統一王者のゴロフキンは正規王者ダニエル・ジェイコブス(米国)に3−0(115−112、115−112、114−113)の判定勝ち。19,939人の大観衆の前で、ゴロフキンは4ラウンドには右をダブルで打ち込んでダウンを奪う見せ場を作った。硬い左ジャブも効果的で、9ラウンドには2発の右アッパーでジェイコブスに再び大きなダメージを与えた。
しかし、このように効かせた場面を除けば、特に中盤以降は30歳の黒人ファイターのアウトボクシングに大苦戦。スイッチを好む相手のサウスポースタイルに対応仕切れず、後半は回転の早い連打をまとめられてポイントも奪われた。結果として、2009年から続いたゴロフキンの連続KO記録は23でストップしてしまう。
ジェイコブス「考えていたほどに効かなかった」
ゴロフキンにダウンを奪われたジェイコブスだが、「考えていたほど効かなかった」とコメント 【Getty Images】
辛くも判定勝利を挙げた直後のリングで、統一王者は素直に相手を称えた。ゴロフキン本人、K2プロモーションズのトム・ローフラー・プロモーターを始め、試合後の陣営の表情が興奮よりも安堵(あんど)に見えたのは気のせいではなかっただろう。与えたダメージを考えればゴロフキンの判定勝利で良いとは思うが、事前に想定していたファイトプラン通りに戦えたのはジェイコブスの方。それゆえに、ジェイコブスのアウトボクシングの方を評価した現地メディアも少なくなかった。
「ゴロフキンのパワーはみんなが騒いでいたほどではなかった。ダウンしたときでさえも、考えていたほどには効かなかった。1発もらったらそれで終わりとか、そんなことはなかったからね」
ジェイコブスはそう述べたが、実際にこの日のゴロフキンのステップはいつもほどスムーズではないように見えた。疲れが出た後半ラウンドに、パンチに体重が乗らなかったのはそのためか。不恰好な空振りも少なくなく、打ち終わりにカウンターも浴びた。何より気になるのは、攻守両面での似たようなほころびは、実は昨年9月のケル・ブルック(イギリス)戦でも散見されていたことだ。
トレーナーは“ピークを過ぎた”を否定
怪物王者も来月で35歳。「ピークを過ぎた」という声もあがるが…… 【Getty Images】
「衰えを見せているとは思わない。対戦相手が向上しているだけだ」
トレーナーのアベル・サンチェス氏はそう語り、一部で漏れ始めた“ピークを過ぎた”という声を否定していた。もちろんこの日まで12連続KOを続けていたジェイコブスもパワー、身体能力を兼備した好選手ではある。特にこの日はキャリアをかけたかのような気概が感じられ、怪物王者が手を焼くのも仕方なかったのかもしれない。
しかし……過去2戦のゴロフキンは泳ぐように流れるパンチが多く、反応も鈍かったことは無視できない。スタミナにも多少の不安が感じられ、被弾も増えた。それらは紛れもなく衰えの兆候ではないか。この試合を見た関係者、ライバル選手がそう考えたとしても、無理からぬところだったのだろう。