シャケ、トラは瞼閉じず 「競馬巴投げ!第143回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

チンパンジーが人類の一種族としてデビューする日は近い?

[写真1]キタサンブラック 【写真:乗峯栄一】

「チンパンジーが仲間に棒っきれの道具を貸し出すことがある」と京大霊長類研究所が報告していた。これは大変なことだと思う。

「奪い取る」あるいは「やる」というのと、「貸す」というのは大変な違いがある。「所有」というのは、その物を自由に売買・処分できるということを意味する。「この棒っきれはもらったんじゃないんだ。あのキキとかいうチンパンジーが貸してくれたんだ。用が済んだら返さなきゃいけない」とチンパンジーが義務感のようなものを感じているとしたら、これは大変な人間への肉薄だ。

 この違いが分かれば、チンパンジーが人類の一種族としてデビューする日も近い。「おたく、出身は? ああ、山形ね。おたくは? ああハワイなの。おたくは? ああインドネシアのチンパンジーね。なるほどね」という日は近い。

 むしろ他人から借りたおカネで豪邸を建てたり、タイの若い男に貢いで性生活をエンジョイしたりする女はチンパンジーの部族に入って、「もらう」と「借りる」の違いを学んだ方がいい。

目の前の女が分からんと思ったら、まず『動物の交尾』を調べることだ

[写真2]サトノダイヤモンド 【写真:乗峯栄一】

 あれほど「ヒイキ松山」「ヒイキ松山」と言いながら、松山弘平・初GIの皐月賞の大穴を取れなかった。このときぼくは静かに瞼を閉じた。「クーッ」という呟きも漏らした。

 しかしこういう場合、ぼくは「つなぎ融資の女王」と違って、静かに『動物の性生活』という本を開く。「瞼を閉じる」とはどういう行為なのか、「声をあげる」とはどういう行為なのかということを、動物たちに聞いてみる。そういう謙虚さを忘れない。

 瞼を閉じる、声をあげるという行為は通常女性の方に多いと思われる。さらに瞼を閉じ、声をあげた女が、突然「あなたとはこれっきりよ。もう電話もしないでね」と言い、ハンドバッグ振り回して出て行くことも多い。あれはなぜだ。

「どういうことなんだ?」と問いかけたって無駄だ。そんなこと聞いたってヤツらはほんとのことを言いはしない。

 目の前の女が分からんと思ったら、ぼくと同じように、まず『動物の交尾』を調べることだ。

 キーワードは「瞼を閉じる」「声を上げる」の二点で、人間の男はこれに騙され続けてきた。一体どの動物の交尾からメスは目を閉じ、声を上げるようになったか?

女の瞼、女の声は単なる書類審査みたいなもの

[写真3]シュヴァルグラン 【写真:乗峯栄一】

 ムシの交尾ではオス・メスとも目を閉じない。瞼がないからだ。

 ハ虫類・鳥類・ホ乳類は瞼を持つが、交尾のとき「瞼が自然に下りちゃう」とメスが言う種は見あたらない。馬のメスなど、コトは早いし、目は閉じないし「なーんもありゃしないわよ」などと言う(ただ後ろにまわったオスを蹴り飛ばさないのが唯一の受け入れの合図だという)。これでは精がない。

「草食動物は敵から襲撃される可能性があるから、交尾中も瞼を閉じないんだ」と言う人もいるが、肉食獣でも閉じない種が多い。

 ただライオンやトラなどネコ科ではオスは黙り、牝が叫ぶ。でもその牝はガッと目を見開いて叫んでいるから、気持ちよくて叫んでいるのか、気持ち悪くて叫んでいるのか、判別が難しい。しかし子供は生まれる。「子供が生まれたから気持ちよかったんだろう」という人もいるが、交尾中、目を見開いて叫んでいるメスを見ていると、むしろ「あんた、どっか行ってよ、鬱陶しいわ」と言っているようにすら思える。「叫ぶ時は目を閉じましょう」とアフリカ・セレンゲティあたりのライオン村に行って指導しなきゃいけないかもしれない。

 ガラパゴス・ゾウガメという巨大なカメは、後ろから上になったオス・ゾウガメは皺だらけの首をいっぱいに伸ばし、瞼を閉じて「グーォーホー」というような異様な声を出すが、下になったメスは目をキョロキョロさせて「え? なにごと?」などと人ごとのような顔をしている。

 トコジラミ(ナンキンムシ)の交尾では、メスに外性器がないため、「さあ、あんた、わたしのこの蛇腹の腹にグッ突き刺しなさいよ」とメスが腹を突き出す。「突き刺せないの、この意気地なし」とののしるところから交尾が始まる。もちろん、メスの目はじっと意気地なしのオスを睨み続ける。

 つまり瞼を閉じる、声をあげるのは、動物種それぞれによって全然違う現象だから、間違っても「この女、オレに参ってるな、惚れやがったな」などと思ってはいけないということだ。

「今度はオレがガラパゴスゾウガメになって、目を閉じて大きな声出すから、お前は静かに目を開いてキョロキョロしてろよ」と言い、「グーォーホー」と大声で男が叫んでも、女が平気な顔でキョロキョロあちこちを見ていられたら、これはプラス・マイナス両様を会得したということで、夫婦和合が成ったと言えるだろう。

 何にしろ、とにかく早合点はいけない。女の瞼、女の声は単なる書類審査みたいなものなのだから。

1/2ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント