フェブラリーSは三橋美智也の黄金の夢 「競馬巴投げ!第139回」1万円馬券勝負
的場均は三橋美智也だ。おんな船頭唄だ
[写真1]アスカノロマン 【写真:乗峯栄一】
そのときぼくは「的場均は三橋美智也だ。おんな船頭唄だ」と叫んだが、周りの誰もキョトンとしていたので仕方ない。歌うしかない。
「♪嬉しがらーせえて 泣かせーて 消えーた 憎いあの夜ーのお 旅のかーぜ」(藤間哲郎作詞)
朗々と歌いあげたのに、まだみんなキョトンとしている。しょうがないなあ。
「♪思いー出すさえ ざんざら真菰(まこも) 鳴るな うーつろーなあ このー むーねーに」
「でも“ざんざら真菰”って何だ? ザラメみたいなもんか? だいたい何でこの歌がおんな船頭唄なんだ? “おんな船頭”って言ったら、こんな、ゴツい腕して、色は真っ黒で女プロレスラーみたいなんじゃないのか? “おい、客たち、静かにしろ、いまからオラが自慢の唄、披露するでな”とか、そういう雰囲気じゃないのか? それが“嬉しがらせて 泣かせて消えた”って、薄情な男のことを歌ってんのか? 訳の分からん歌だ、何なんだ、この歌は」とか、一人ブツブツ言っていると、周りの空気がおかしい。
みな、アングリと口を開けたままだ。だいたい、この「おんな船頭唄」というもの自体を知らない雰囲気なのだ。
「お前らは三橋美智也先生を知らないのか? “♪惚ーれて 惚ーれて 惚れていながらゆーくオレを 旅をせーかせーる ベルの音”え? 『哀愁列車』知らないのか? “葵の花に吹く 時代の嵐 乱れーて騒ぐ 京のそーら”え? 『新選組の歌』も知らないのか? ほんとに、どうしようもないなあ」
東京だよ、ウオッカさん
[写真2]インカンテーション 【写真:乗峯栄一】
「♪嬉しがらせーて 泣かせーて 消えーた ムーア」てなことになるんじゃないのか?というようなことが書きたかった。ひょっとしたら「♪嬉しがらせーて 嬉しがらせて、も一つ嬉しがらせて消えーた ムーア」てなことになるかもしれないが、てなことも書きたかった。
しかし書いていて、どうも納得できない感じになってきた。
ウオッカが活躍した09年、10年ごろ、ネット上の若者を中心に「特に東京競馬場に強いウオッカ」に対して「東京だよ、ウオッカさん」がリバイバル・ヒットしているというニュースが出た。
島倉千代子の『東京だよ、おっ母さん』は昭和32年のリリースだ。それに対して『おんな船頭歌』は昭和30年だ。ほぼ同時期だ。いったいいまの若者たちは、戦後歌謡曲に対してどういうイメージを持っているんだろうか。分からん。