メッシ不在のW杯はあり得るのか? 代表チームの「若返り」を求める声も

南米予選4試合のうち3試合を欠場することに

メッシは南米予選チリ戦で副審に向けて暴言を発したことで、4試合の出場停止処分を受けた 【写真:ロイター/アフロ】

 ここ数日、リオネル・メッシは世界中で注目を集めている。その理由は彼がピッチ上で披露した天才的なプレーでも、1試合で量産したゴール数でもない。彼にしてはめずらしく、ワールドカップ(W杯)南米予選のチリ戦(1−0)で、副審に向けて繰り返し暴言を発したことで4試合の出場停止処分を受け、W杯ロシア大会でその姿を見られなくなってしまう可能性が高まってきたからだ。

 メッシ不在のW杯など本当にありえるのだろうか? その問いに今すぐ答える必要があるのならば、答えはイエスだ。メッシとアルゼンチンはW杯出場を逃す可能性がある。実際、現時点でアルゼンチンはオセアニア代表との大陸間プレーオフに回るか、それすらかなわない順位にいるのだ。

 現時点で科されている4試合の出場停止のうち、すでに3月28日(現地時間)のボリビア戦で1試合を消化したメッシは、このまま処分が軽減されなければ、残る南米予選の4試合のうち3試合を欠場することになる。その場合、復帰するのは高地キトで行われるエクアドルとの最終節となるわけだが、その時にはアルゼンチンの命運が尽きているか、そうでなくとも、W杯出場へ向け深刻な事態に陥っている可能性がある。いずれにせよ、理想的な状況でピッチに戻ってくることはまずないだろう。

激高の理由は明らかにされず

クラブでも代表でも、普段は言葉少なに見えるメッシだが、激高の理由は何だったのだろうか 【Getty Images】

 なぜメッシは誰が見ても分かるほど怒りをあらわにし、2人の副審に暴言を浴びせたのか――。

 それは誰もが疑問に思っているところだ。彼はクラブや代表の公式イベントですら体裁を気にすることなく、いつも黙りこくっているような男である。加えて、南米予選ではまだ一度も警告を受けていなかったので、ラパスで行われたボリビア戦で累積警告を消化することが目的だったわけでもない。だとしたら、チリを下した試合後にあいさつをかわす際まで、レフェリーに悪態をついていた真の理由は何だったのだろうか。

 この疑問に対する明確な答えはまだ見つかっていない。ただ6月24日に30歳の誕生日を控え(この日は2児を授かった妻との結婚記念日でもある)、14年もの間プロとして戦い、現在は代表のキャプテンも務めるほど豊富な経験を積んできた彼のこと。自身の行為が今後に控える重要な試合の欠場につながることは、間違いなく分かっていたはずだ。

 ボリビアに0−2で敗れた時点で、アルゼンチンの南米予選における状況は相当厳しくなってきた。現時点では大陸間プレーオフに回る5位に付けているが、残る4試合の中には困難なアウェーゲームが2つある。1つはモンテビデオ(ウルグアイの首都)で行われる次節のウルグアイ戦だ。その後はすでに予選敗退が決まっているベネズエラ、同じく対戦時には望みがついえている可能性の高いペルーとのホームゲームを経て、最終節で命運を決する一戦となり得るエクアドルとのアウェー戦を迎える。

アルゼンチンとって致命傷となるメッシの不在

アルゼンチンはメッシ不在で臨んだボリビア戦に敗れ、5位に転落した 【写真:ロイター/アフロ】

 これまでアルゼンチンは、メッシが出場した6試合では5勝1敗と勝ち点15を獲得しているが、メッシ不在の8試合では1勝4分け3敗と獲得した勝ち点はわずか7。この明白なデータが示す通り、世界最高の選手であるメッシの不在はアルゼンチンにとって致命傷となり得るのだ。

 先日アルゼンチンフットボール協会(AFA)はスペインの著名な弁護士事務所と契約を結んだ。AFAは第一にメッシの出場停止処分の軽減を求めており、それが不可能であれば、今年半ばの国際Aマッチデーに行う親善試合(すでにオーストラリアでブラジルとの対戦が検討されている)で出場停止を消化できるよう、FIFA(国際サッカー連盟)の規律委員会に上訴する準備を進めている。いずれにせよ、処分の軽減が認められる可能性はかなり低いと思われる。

 代表チームの未来に暗雲をもたらしたメッシの出場停止に加え、アルゼンチンはAFAの政権交代が引き起こした混乱にもさいなまれている。3月29日の会長選挙を経て発足した新体制の役員たちは、チームの成績だけでなく、前体制のときに選出されたという理由でエドガルド・バウサ監督のサイクルは終わったとみなしており、現在セビージャを率いるホルヘ・サンパオリの招聘(しょうへい)に動き始めている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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