小林祐希、オールラウンダーへと進化? 蘭のトレンドはカメレオンのようなMF
小林は「コネクティングMF」という、日本では聞き慣れないポジションにチャレンジしていた 【Getty Images】
「リバプールの(ジョルジニオ・)ワイナルドゥムもそう。彼らは試合に応じて、自らの役割を変えることができる。コントロールMF、攻撃的MF、コネクティングMF――。オランダのモダンMFは、まるでカメレオンのようなんだ。今のオランダサッカー界は厳しい状況に置かれているけれど、こういったMFの誕生は一筋の光明なんだよ」(ワイフェルス記者)
「日本のMFはどうなんだい?」と彼が逆質問をしてきた。日本人の場合、「攻撃的MF(10番タイプ、トップ下、2列目、ゲームメーカー、チャンスメーカー、サイドハーフ)」と「セントラルMF(ボランチ、守備的MF、コントロールMF)」のどちらかのポジションにこだわっているMFが多いと感じる。
トップ下への強いこだわりを持っていた小林だが……
彼はトップ下へのこだわりを強く持っており、オランダに来てから「自分のポジションはボランチになった」(本人談)という。しばらくはその役割をすんなり受け入れることができなかったが、11月20日(現地時間)、小林は「トップ下への未練を持ったままボランチをやったら、中途半端になってしまう。ボランチとして極めてみます。その上で『トップ下をやってくれ』と言われる日が来たら、本当にうれしいです」と“ボランチ宣言”を出した。小林にとっては、トップ下からボランチへの大コンバートだ。しかし、今のオランダのトップレベルのMFは、そこまで大げさにコンバートとは捉えていない。
知らず知らずのうちに小林は“コネクティングMF”という、日本では聞き慣れないポジションにチャレンジしていた。今季前半戦のヘーレンフェーンは逆三角形の中盤を採用し、アンカーにスタイン・スハールス、2列目の右にペレ・ファン・アメルスフォールト、左に小林がいた。小林のタスクは、シャドーストライカータイプのファン・アメルスフォールトと、アンカーのスハールスを“つなぐ”ことだった。これがコネクティングMFの概念である。
ところが小林は自分をボランチと信じ切っていたため、ポジショニングの重心が後ろになっていた。そこでチームが期待する動きと、小林の理解に齟齬(そご)が生まれ、12月1日のミーティングで「私もチームメートも祐希を信用しているから、もっと攻撃でも力を発揮してほしい」という要求をされた。
その2日後に行われた第15節ゴー・アヘッド・イーグルス戦(3−1)で惜しみなく攻守のスプリントを繰り返すことを決意した小林は、味方のシュートのリバウンドをフリーランニングから詰めて、オランダリーグ初ゴールを記録した。こうして小林は、トップ下でもボランチでもない、コネクティングMFとして今季前半戦を終えたのである。
視野の広さを買われ、セントラルMFへ
セントラルMFになってからの小林のインターセプトには目を見張るものがある 【Getty Images】
ウインターブレーク明け、1月14日に行われた第18節ADOデンハーグ戦、小林は逆三角形の中盤のアンカーとしてプレーし、対面のエドゥアルド・デュプランを完封した。前半は積極的に攻撃に絡み、惜しいシュートを放つシーンもあったものの、後半はストレッペル監督の怒号が飛び、攻撃を控えることになった。
翌節、1月22日のPSV戦(3−4)からヘーレンフェーンは正三角形の中盤を採用し、小林はモーテン・トルスビーとセントラルMFのコンビを組んだ。32分、PSVのセンターバック(CB)、エクトル・モレーノから前線へスプリントしたデービー・プロッパーにロングフィード。このプロッパーのフリーランニングに、マーカーの小林は味方とのコミュニケーションが足らず、付いていかなかったため、ヘディングによるゴールを許す結果となった。それでも、小林は危険察知能力に優れたプレーを披露し、65分にはバイタルエリアでPSVの選手がフリーになっていたが、その素早い帰陣でインターセプトしてピンチをしのぐシーンもあった。
セントラルMFになってからの小林のインターセプトや相手パスのブロックには目を見張るものがある。1月27日に行われたKNVBカップ準々決勝の対AZ戦(0−1)後、小林はこう語っている。
「多分、インターセプトの数はリーグの中でも結構上の方なんじゃないか。それくらい、インターセプトする回数は増えています。そこにはかなり手応えを感じています」。また、1対1で激しく接触した際にも、小林が先に立ち上がっても、相手がうずくまったままという場面がよく見受けられた。それだけ体が頑健になったのだろう。