小林祐希、オールラウンダーへと進化? 蘭のトレンドはカメレオンのようなMF

中田徹

「攻撃を改善すれば守備が、守備を改善すれば攻撃がよくなる」

小林本人も「気持ち良かった」と語るフローニンゲン戦でのプレーとは? 【Getty Images】

 1月29日に行われた第20節の相手、フローニンゲンは4−4−2の3ラインでしっかりブロックを作ってサッカーをするチームだ。おのずと4−3−3のヘーレンフェーンは両サイドバック(SB)のステファノ・マルゾとルーカス・バイカーがフリーになる。この2人が高い位置へボールを運んでいき、中途半端にロストすると、逆にフローニンゲンがサイドに空いたスペースを突いてくる。前半は小林が右に左に、そのスペースへの侵入を体を張って防ぎ続けた。

 フローニンゲンのセントラルMF(ジュニーニョ・バクーナ)と右サイドハーフ(シモン・ティブリング)に対し、小林が“1対2”になる場面も多かった。後半になると、小林が守備で数的不利になることはなかったが、ハーフタイムに守備の修正を施したのだろうか? 小林はこう説明する。

「守備を修正したのではなくて、攻撃で修正したら守備もハマったという感じです。俺はボールを受けられなくてもいいから前に行って、うちのCB2人とトルスビー(小林とコンビを組むセントラルMF)が相手の2トップに対して“3対2”の形を作った。そして俺が相手(バクーナ)に付いた。攻撃で自分たちが高い位置を取れば、相手も下がらざるを得ないから、一方的な展開になった。攻撃を改善すれば守備が、守備を改善すれば攻撃がよくなる。サッカーはそういうものだと思います」

「気持ち良かった」と語るフローニンゲン戦でのプレー

 映像を見直してみると、後半は小林が前にポジションを取るとトルスビーが引き、トルスビーが前にポジションを取ると小林が引くということを繰り返していた。こうした動きが相手の中盤をけん制し、動きを制限していたのだ。もくろみ通り、後半は左SBのバイカーが空き続け、シュートにクロスに忙しく働いていた。

 オランダに来てからの小林の特徴的な動きは、フローニンゲン戦の17分と88分のプレーに見られる。

 17分、GKのエルビン・ムルダーからボールを受けた小林が、相手マークを剥がして、バイカー、レザ・ゴーチャネジハドとワンツーでボールを前に運び、アタッキングゾーンで味方のサポートをする。その攻撃は右SBマルゾのクロスから、FWアルベル・ゼネリのボレーシュートで終わった。ビルドアップから攻撃の起点となった小林は「それはもう自分のイメージ通りに進んだから、あの一瞬はすごく気持ちが良かったです」と振り返る。

 88分、トルスビーが自陣でボールを失い、フローニンゲンの左サイドハーフ、ブライアン・リンセンがキレのあるドリブルでCBをかわしてペナルティーエリアに侵入した場面。危機を察知した小林は20メートルほどのスプリントでカバーに入り、体を張った守備でピンチを防いだ。

 オランダでコネクティングMF、アンカー、セントラルMFを務め、AZ戦の終盤はCBもこなした小林。もしかしたら、彼はオランダのトレンドである“オールラウンダーなMF”に進化していくのかもしれない。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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