新生ラグビー日本代表の戦術を分析 ディフェンスが崩れた理由とは
強豪相手のスクラムでは収穫も
準備期間が少ない中、フィールドプレーだけではなく、スクラムでも奮闘したHO堀江 【築田純】
試合途中で体格の大きな相手の圧力の前に反則してしまったシーンもあったが、対等に組んだり、反則を誘ったりするシーンもあったことは収穫。ジョセフHCは「我々は1回しかスクラム練習していないのに関わらず、こういったパフォーマンスができたのは長谷川コーチがいい仕事してくれたから」と盟友を称え、長谷川コーチも「途中から(トップリーグの)チームでやっている組み方に戻ってしまった。もう1週間あったら……」と悔しそうな表情を見せた。
FL三村「前を見えていない人もいた」
ジョセフHCは激しく前に出るディフェンスを導入した 【築田純】
ただ選手の多くは自チームで、内から外に押し出すようにディフェンスする「ドリフトディフェンス」を導入しているため、頭で理解していても混乱していたようだ。また初キャップ組が13人でコミュニケーションや連係が取れていなかった影響も大きかった。
組織ディフェンスでは誰がトイメンをマークするか「ノミネート(自分が対応する選手を周囲に伝える)」するが、それが行われていないことがあった。また、ラックが形成された時には周囲に4人の選手が立つが、順目の2人目の選手がポッカリといないところを突かれたり、個々の判断で激しく前に出たものの相手にかわされて外側でピンチを迎えるなど、最後まで安定させることはできなかった。
初キャップながら落ち着いたプレーを見せていたFL三村は「ディフェンスは急ピッチでやったので完璧ではないのはわかっていた。コミュニケーションと状況判断の問題だったと思います。連係がうまくできておらず、徹底できていなかった。前を見られている人はわかっているが、見えていない人もいた」と冷静に分析してくれた。
また共同主将のひとりCTB立川は「フィジカルに来ること、オフロードパス(タックルを受けながらのパス)もしてくるのはわかっていた。新しいディフェンスシステムで相手のミスも誘うことができたが、自分たちのシステムのところで、ミスがあった。修正すれば大丈夫かなと思います」と振り返った。ただ11月のテストマッチではアタックの精度を上げることに注力し、従来のままのディフェンスで戦っても良かったのではと思わざるを得ない。2019年を見据えて……ということもわかるが、あまりにも淡泊に失点を重ねて、ホームでの戦いなのに接戦に持ち込めなかったは残念でならない。
CTB立川「チームを信じてやっていきたい」
「ONE TEAM」として欧州遠征に臨む 【築田純】
いずれにせよW杯まであと3年と考えれば、振り返っている余裕はない。力強いコンタクトで会場を沸かせたCTB立川は「相手は強かったですけど、僕たちは下を向くことなく、これから上に上がっていくしかない。チームを信じてやっていきたい」と前を向いた。
すでに日本代表は欧州遠征の最初の目的地であるトビリシに向けて出発した。11月12日にジョージア、19日にウェールズ、26日はフィジーと格上と対戦が続く。ジェイミー・ジャパンのスローガンは「ONE TEAM」。チーム一丸となって、どこまでチーム力を高めることができるか。この1年間を怠惰に費やしたラグビー日本代表にとって、一試合も無駄にすることはできない。