ジョセフHC「新しい強みを作っていく」 新生ジャパンの強化方針を語る
9月に日本代表の新HCに就任したジェイミー・ジョセフ氏 【スポーツナビ】
バックグラウンドとコーチキャリア
この日に53歳の若さで亡くなったラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんに対し、ジョセフHCからこのようなコメントがあり、今回のみなとスポーツフォーラムは全員での黙とうからスタートした。
9月に日本代表への就任が発表されたジョセフHCは、まず簡単な自己紹介から講演を始めた。生まれ育った故郷・ニュージーランドの風景を写真で披露しながら「私の母にはたくさん家族がおり、父の方にも11人の兄弟がいて、本当に大きな家族のもとに私は生まれた。祖父が家族経営の農家をやっており、非常に広大な土地で農家を営んでいるにぎやかな家族だった」と自身のバックグラウンドを来場者へ紹介した。
次に自身のキャリアについて。「オールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)はニュージーランドのすべての子供が憧れるチームだ。全国の人々が応援するチームの一員になりたいと、5歳のころから憧れていた」との思いを語り、「(自身がニュージーランド代表となり、)夢をかなえることができたのは本当に幸運なことだった」と目を細めた。
その後、ジョセフHCは1999年に平尾誠二氏に誘われ日本代表のメンバー入りを果たす。「正直に申し上げると、自分がオールブラックス以外の国の代表になるとは思ってもいなかった」と明かし、「平尾さんが声をかけてくれたから決断した。当時私は25歳で妻も若かったが、今まで私がした決断の中で一番良いものだった」と日本代表入りの経緯を振り返った。
その後コーチとしてのキャリアを開始したのは03年。「本当にたくさんの人に助けられてここまできた」と感謝の言葉を述べつつ、特に支えとなった5人の名前を挙げた。1人目にはジョセフHCの父を挙げ、「選手として国内トップクラスにいて、248試合ほどプレーした。その後指導者になり、オールブラックスのコーチとしてチームを率いたことがある」とコメント。続いて3名のオールブラックスのコーチ、ローリー・メインズ氏、ゴードン・ハンター氏、トニー・ビルバード氏の名前を挙げた。それぞれに優秀な指導者だったことを紹介しつつ、彼らから多くの指導方法を学んだと振り返った。最後に挙がった名前は、宗像サニックスブルースの社長である宗政伸一氏。「私が日本を好きになる理由や影響を本当に大きく与えてくれた方」と、宗政社長との出会いが大きなターニングポイントだったことを強調していた。
W杯に向けた準備がスタート
ジョセフHCはスライドを使用しながら、来場者に日本代表の強化方針を紹介した 【スポーツナビ】
日本代表のチームを築いていく過程に関して、「エディー・ジョーンズ(前)HCがW杯で十分に戦える選手を育てた」とまずは日本代表の現在地を表現。その上で、「私のチャレンジは、全く違った形になる。次のW杯に向けた準備だ」と自身の考えを明かした。
日本の課題については、スーパーラグビーに参戦していることに触れつつ、「1人の選手がスーパーラグビー、代表、トップリーグに出場したら年間45試合ほど戦うことになり、これはラグビー選手としては多過ぎる。私の任務は、スーパーラグビーと並行して、いかに適切で効果的なプログラムを作っていくかだ」との見解を語った。
また、11月5日に行われるアルゼンチン代表戦に向けて新たに招集したメンバーについても言及。昨年、W杯で目覚ましい活躍を見せた日本代表だが、「(15年W杯の)南アフリカ戦のメンバーから16人の選手が今回はいない」とコメント。「本当に若いチームになり、その分経験も不足してくる。コーチとして、そのようなチームを率いるのは非常にエキサイティングだが、若い選手たちに自信を植え付けながら、代表チームとしてプレーをする時間を作っていきたい」とチームビルディングの考え方を述べた。
続いて、強化策についても少しだけ紹介。「成功の鍵は一つだけ」として挙げたのは「選手との方向性の一致」。「コーチとプレーヤーが同じ目標・目的に向かって進んでいけるかどうかが非常に重要である」と持論を展開した。招集する選手の基準としては「リーダーになれるか」と「学ぶ力があるか」の2つを重要視したと説明。「戦略を選手たちに落とし込み、自信を持ってプレーするために練習を効果的なものにしたい」と力強く語った。