【侍ジャパンU-18代表・小倉全由監督インタビュー②】育成年代における侍ジャパンの意義「甲子園は通過点、その先の侍ジャパンを目標に」

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【©BFJ】

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※本記事は前・中・後編(3部構成)の中編


侍ジャパンU-18代表が準優勝となった「​​第13回 BFA U18アジア選手権」。

前編では大会を振り返りながら、日本が今後国際大会で勝つために必要な要素を語っていただいた。

この7日間では、勝利を目指すことだけではない部分でも発見があった。

アジアそして世界に野球が普及していくために大切なことや、育成年代が侍ジャパンのユニホームを着る意義などについて、引き続き小倉全由監督(前日大三高監督)に話を伺った。

アジアの野球発展に必要な国際交流

今回のアジア選手権では、世代問わず国際試合で日本と対戦している韓国やチャイニーズ・タイペイに加えて香港、スリランカ・フィリピンが参加。

オープニングラウンドでその3チームと対戦し、いずれも10点差以上をつけて日本が勝利していた。

小倉監督はこの大きな差について感じたことを話した。

「オープニングラウンドで対戦した3チームはまだ発展途上と言いますか、レベルの差があったのは事実です。ただ、それで終わりではいけない。

アジアで言うと日本・韓国・台湾は野球の先進国・地域じゃないですか?なので、この3つの指導者が現地に行って協力するなどして、もっとアジアで野球を普及させる必要があると思いましたね。

私も今回実際に経験したことで感じられたように、日本の選手たちにとって自分たちがいかに恵まれているかにも気づけますから」

野球の途上国に日本らが技術や知識を共有していくことが必要と語る 【©BFJ】

侍ジャパンU-18代表も大会の合間で国際交流を行った。9月5日のスーパーラウンドに向けた公式練習で、パキスタン代表のジャン・ハスネン(三沢高)が練習に参加した。

ジャンは代表選手として台湾入りしたものの、パキスタン代表の国内在住選手が同国政府より「外交関係のない台湾に渡航はできない」と通達を受けたため、現地選手が台湾入りできない事態に見舞われた。

結果、選手数不足により棄権となってしまい大会への参加が叶わなかったのだ。この事態を日本高校野球連盟(高野連)が憂慮し、立ち上がった。

”今大会に参加する目的は勝つことだけではなく、アジアの野球の普及・発展のためでもある”という方針を持つ高野連。

ジャンがこの日の練習参加できるよう日本代表へ打診し、日本側も快諾し実現に至った。

小倉監督もティー打撃の際にジャンへアドバイスを送り、その後フリー打撃では柵越えを見せるなどその実力を披露。終了後にはそのホームランボールや記念品も手渡した。

「彼は実費で大会に来ていたんですよ。他国でもスパイクが揃っていないチームもあったりして、そう考えると我々は本当に恵まれていますよね。自分自身もすごく勉強になりましたし、選手たちもそこは強く感じたのではないかな。

改めて、野球の普及というのは国や地域を挙げてやっていくことが必要ではないかと。そう思いました」

小倉監督が球児たちに願った目標とは?

現在侍ジャパンは世代別に展開され、U-18に加えてU-15・U-12と各カテゴリーでも国際大会に参加している。

育成年代でもその活躍はめざましく、U-18のアジア準優勝に加えてU-15では今年「第6回 WBSC U-15 ワールドカップ」で初優勝を飾るなど、世界の舞台で結果を残している。

各年代において侍ジャパンでプレーすることにはどんな意義があるのか。小倉監督に尋ねてみた。

「”日本代表だ”というのが一番の自信になるのではないですかね。今回もそうですが、日の丸を背負ったことは必ずこれからの人生にプラスになりますから。

私の願いとしては、これからは高校野球で”甲子園を目指すこと”がゴールではなく、その先の”侍ジャパンに選ばれるようになるんだ”。これを目標にしてもらいたい。

予選が通過点、甲子園が目標というところから、”あくまでも甲子園が通過点”となるようにね。もっと上を目指すからこそさらに練習しないきゃいけないですから、そのくらいの意識の高さを持ってもらいたいですね」

侍ジャパンに選ばれることが甲子園の先の目標になる 【©BFJ】

今回も選手たちにとってプラスとなった侍ジャパンでの経験。甲子園という日本中から注目される舞台で戦った球児にとっても、やはりプレッシャーがあったことは感じていたという。

それは、スーパーラウンドで韓国やチャイニーズ・タイペイと1点を争う攻防を繰り広げていただけに尚更のことだった。

「日の丸を背負っているわけですし、それは甲子園で戦っているのとは違ったと思います。違いがないわけがないですから。

それでも選手たちは(チャイニーズ・タイペイ相手に10安打と)決勝戦で打ってましたよね。相手に勝ち越された後でも、そのあと満塁や二・三塁と攻めていましたから。

『ここで打たなきゃ』というプレッシャーはあったと思います。甲子園で活躍していたとしても、中学生で日の丸を背負っていたとしても、高校で日の丸を背負うのはまたプレッシャーが違うと思うんです。

もっと私が緩めてあげられたら結果が違ったのかなという反省もありますが、そんな中で選手が頑張ってくれました」

これまでとは違うプレッシャーの中でも戦い抜いた 【©BFJ】

敗戦を糧に選手たちへ贈った未来へのメッセージ

球児のこれからの人生にとって貴重な経験となるのは、未来に向けても言えることであった。

小倉監督は大会後、選手たちへ伝えたことについて明かしてくれた。

「今回の大会では準優勝と言っても負けたわけなので、選手たちには伝えたんです。『今後みんなが大学や社会人・プロに行ってからでも、この負けた悔しさをどれだけ力にできる。それが、自分の人生良くしていくかだよ』と。

あとは、『みんなには悪いけど、俺には来年のワールドカップというチャンスがもう一回ある。ここで経験したことを踏まえて、もう一回勉強し直して来年頑張るよ』とも言いました」

お互いに糧にして、これからも邁進しようと語った 【©BFJ】

決勝のチャイニーズ・タイペイ戦で敗れ、相手が歓喜に沸く様子をナインは目に刻み込んでいた。自身も悔しさを心に焼きつけ、加えてこう話したという。

「選手たちはあの光景を見て悔しさを感じなきゃダメだよと。負けた悔しさをこれからも忘れずに、『あの経験が自分たちを強くしてくれた』と言えるようにするのは自分なのですから」

U-18世代の侍ジャパンに向けた意識の変化

続いて小倉監督に訊いたのが、この10数年の間で日本代表の意義や価値が変わったかについて。

小倉監督は本大会の前にも、12年に行われた「第25回IBAF18U世界野球選手権大会」で日本代表の指揮を執っている。

メンバーには大谷翔平(花巻東)や藤浪晋太郎・森友哉(共に大阪桐蔭)ら、現在もメジャーやプロで活躍する選手たちが名を連ねていた。

当時は侍ジャパンとして日本代表が常設化されたのが1年ほどで、各世代が連携し世界で勝つ体制を整えている過程だった。

12年ぶりに自身も日の丸を背負って、感じた変化を語った。

「あの当時は、行く前から”侍ジャパン”などと注目されることは今ほどなかった印象です。自分が大谷選手たちと世界選手権に行ったあたりから、『出るからには勝たなきゃいけない』といった雰囲気がつくられたと感じています。

今では各世代で”侍ジャパン”という肩書がついていますよね。あとは去年の世界選手権も優勝して、きっと学校の先輩も一員だった子もいるでしょうから、目標が近くなっているのではないかと。

なので、今の選手たちの方が侍ジャパンに対する意識は強くなっていると思います」

侍ジャパンとしての意義は選手たちも高く感じている 【©BFJ】

ここまでアジア大会を振り返るとともに、国際交流そして日の丸を背負う意義などを語っていただいた。

さらに加えて、甲子園優勝を何度も経験した名将にこれからの指導者としての在り方も伺うことができた。



※後編へ続く

(取材 / 文:白石怜平)
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著者プロフィール

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