bj王者・琉球が迎えた特別なホーム開幕 “沖縄とともに”Bのトップクラブへ

下地麗子

チームとブースターが一体に、琉球の持ち味を発揮した開幕戦

Bリーグのの歴史的開幕戦に臨んだ琉球(ゴールド)。A東京に敗れはしたものの、沖縄バスケの魅力は十分に伝えた 【加藤よしお】

 9月22日東京・国立代々木競技場第一体育館。日本のプロバスケの歴史的開幕戦の舞台は最終第4クォーター(Q)、沖縄の声援に包まれた。

 アルバルク東京vs.琉球ゴールデンキングスが対決したBリーグ開幕戦。このカードは試合前、日本代表や元NBAプレーヤーを要するA東京に対し、体のサイズで大きく劣る琉球の圧倒的不利が予想され「エリート対雑草」とも表された。しかし、試合は第4Q、bjリーグ4度の優勝を誇る琉球が意地を見せた。

 第4Qを13点ビハインドでむかえた琉球だったが、残り2分を切って琉球・喜多川修平の3ポイントシュートが決まり点差は3点に。会場は、沖縄から東京へ大挙した約2000人と言われる琉球ブースターの声援が響き、まるで琉球のホームゲームのような雰囲気になった。その後琉球はA東京に引き離され5点差で敗れた(75−80)が、チームとブースターが一体となって戦う沖縄バスケの魅力は、地上波でゴールデンタイムに生中継され全国に伝えられた。

 琉球を運営する沖縄バスケットボール株式会社企画部の宮城聖子さんは、「琉球が開幕カードに選ばれた役割は“琉球ブースターとともに”果たせたと思います」と手応えを語った。

昨シーズンから始まっていたBリーグへの挑戦

キャプテン岸本を中心に、昨シーズンから新しいスタイル作りに取り組んできた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 2006年に設立し今シーズンで10年を迎える琉球。bjリーグ最多4度の優勝を誇るが、bj参戦初年度の07−08シーズンにはリーグ最下位を経験しており、勝てないチーム運営の苦しさは十二分に分かっている。それ故、bjリーグ以上のハイレベルな戦いが予想されるBリーグ参戦にあたり、琉球は昨シーズンから準備を進めてきた。

 まずチームとしては、昨シーズンからスタイルを変更していた。それは「人とボールが動き続けるバスケ」だ。

 それまでは1対1で切り崩して得点を重ねるというスタイルだったが、bjリーグ以上にフィジカルの強さを持つ元NBLチームとの対戦を想定し、1対1ではなく5人でボールをシェアしてギャップを作り、一番良いタイミングでシュートを打つスタイルに変更した。この変更で昨シーズン前半は負け込むこともあったものの、新しいスタイルは徐々にチームに浸透、結果的にbjリーグ優勝という最高の形でシーズンを終え、Bリーグに参戦することになった。

 そして、チームを支えるフロントも準備に余念はなかった。

 Bリーグ参戦にチームの戦力アップは必須だ。世界でも名の知れた「トヨタ」など日本を代表する大企業を後ろ盾にするチームとの対戦を前に、選手強化費にもつながる営業収入のアップは避けて通れないフロントの課題だった。

 いわゆる「市民球団」である琉球のスポンサーは約100社、協賛社も含めると約250社にのぼる。営業部員たちは約半年をかけて「より強力な支援を」と各企業にお願いしてまわり、木村達郎代表取締役社長も率先してトップセールスを行った。その結果、ほとんどのスポンサーでアップセールスに成功し、昨シーズンは2億4000万円前後だったスポンサー収入は、今シーズン1億円以上アップの3億5000万円が見えてきた。

 チケット収入でも2億円(昨季は1億8000万円)を達成する見込みで、営業収入も約5億5000万円に達する見込みとBリーグ1年目に目指してきた資金のめどがたった。売上収入2億5000万円以上がBリーグ1部の入会条件だったことを考えれば、琉球の資金はBリーグの中である程度高い水準に達したことがうかがえる。

 そして来る10月1日、沖縄市体育館でのホーム開幕戦はチームとしてはもちろん、多くの企業や沖縄県民に協力をお願いしてきたフロントとしても、昨シーズン以上に顧客満足度を向上させなければならない勝負の日となった。

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著者プロフィール

熊本県出身、元琉球朝日放送・熊本県民テレビアナウンサー・スポーツキャスター。現在、琉球放送スポーツキャスター。2016年結婚・出産を機に熊本から沖縄県那覇市に移住。旧姓 河合。ニュース番組を中心にキャスター・リポーター・ディレクターなどを務め、九州・沖縄をフィールドに取材活動を行う

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