子供たちもシーズン終了、1年を総括 スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(8)

木村浩嗣

スペイン代表の試合と子供の練習が重なる!

閉会式。ユーロ開幕日の6月10日がクラブの閉会式だったが、この後2週間スクールの練習は続いた 【木村浩嗣】

「え、まだやってるの?」と驚かれる。そう、リーガ・エスパニョーラは1カ月以上前に終了し、ユーロ(欧州選手権)2016はとっくの昔に開幕し、シーズン終了を告げるクラブの閉会式も終わったのに、今日(6月21日)もまた練習があるのだ。

 ご存じのように欧州のサッカーシーズンは、基本的に8月中旬に始まり、5月最終週のチャンピオンズリーグ決勝をもって終わる。子供のサッカーシーズンも大人と同じ。ユーロで熱戦が続いているのに、子供たちが練習していてはいけない。そういうルール、あるいは暗黙の了解になっている。6月13日には、15時キックオフのスペイン代表の試合と子供の練習が重なる、という最大のタブーが破られてもいた。

 子供がサッカーを学ぶのにプロのプレーを見ることは非常に重要である。「学ぶ」は「真似ぶ」である。このコラムでも何回か言及したスペインの子供の創造力の豊かさは、レベルの高いプロのプレーを真似することで身に付いている。監督が「クリエーティブなプレーをしなさい」と命じるからできるものではないのだ。技術では劣っていない日本の子供たちがスペインの子供たちに発想や創造力の豊かさで劣っているとすれば、レベルの高い試合を目にしてきた数と量の差によるものだ、と思う。この部分では圧倒的にスペインの子供たちの方が勝っている。

6月に入り、35度を超える日も珍しくない

暑くて閑散としたグラウンド。この日の気温は36度で、親が子供を練習に出さないというのは無理もない 【木村浩嗣】

 だからこそ、少年世代のサッカーの練習・試合の日時は、プロの試合と重ならないように配慮されている。ユーロ開催中の今はテレビにかじりついて、各国代表の試合を見ることが、サッカーがうまくなるためのベストだ、とUEFA(欧州サッカー連盟)もスペインサッカー連盟も考えているのだ。なのに、われわれの練習は続いており、あろうことか最高の勉強の場であるスペイン代表戦が見られない、という一大事も起こったのだった。なぜか? 

 これはわれわれのチームがスクールであり、クラブチームのように連盟管轄ではないゆえなのだ。われわれの管轄機関はセビージャ市役所であり、活動期間は公のスクールカレンダーによって定められている。スペインの小学校は9月始まり6月終わりであり、終業の日の6月22日までわれわれの練習も続くのだ。スペインでも特に暑いことで知られるセビージャでは、5月に入って30度を超えるようになり、6月に入った今は35度を超える日も珍しくないのに……。

 この原稿を皆さんが目にしている時には、シーズンも終了済ということで、今回は1年の総括をしておこう。

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著者プロフィール

元『月刊フットボリスタ』編集長。スペイン・セビージャ在住。1994年に渡西、2006年までサラマンカに滞在。98、99年スペインサッカー連盟公認監督ライセンス(レベル1、2)を取得し8シーズン少年チームを指導。06年8月に帰国し、海外サッカー週刊誌(当時)『footballista』編集長に就任。08年12月に再びスペインへ渡り2015年7月まで“海外在住編集長&特派員”となる。現在はフリー。セビージャ市内のサッカースクールで指導中。著書に17年2月発売の最新刊『footballista主義2』の他、『footballista主義』、訳書に『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』『モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」』『サッカー代理人ジョルジュ・メンデス』『シメオネ超効果』『グアルディオラ総論』(いずれもソル・メディア)がある

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