子供たちもシーズン終了、1年を総括 スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(8)
1年の総括、プレー面での満足度は7
われわれにはイニエスタ(右)、セスク、シルバ(左)らのような引かれた相手を崩し切る力はない 【Getty Images】
次にプレー面では、満足度7。前半のリーグ戦が7勝1分け6敗、42得点41失点で8チーム中4位。後半のリーグ戦が6勝4敗、29得点19失点で6チーム中3位。勝ったり負けたりという感じ。もう少しやれたはずだが、年少の選手が6割を占め、昨季の優勝メンバーが2人しか残っていないという状況では仕方がないか。
前からプレスを掛けてボールを奪い、マイボールの時間帯を増やして攻撃をし続けるという、ポゼッションサッカーは一応浸透したので、この同じスタイルで来季もいく。来季は年長組となる6割がチームを引っ張っていく存在になるだろう。マークをずらしていく段階的なプレスはかなりうまくやれるようになった。セットプレーではCK、スローイン、キックオフとも1個しか準備できなかったので、来季は少なくとも2つずつは用意するつもりだ。
あと戦術面では速攻の意識を高めたい。パスサッカーをする小柄なテクニシャンぞろいだった今季のチームは、ボールを必要以上に触りたがり、攻撃が遅かった。悪い時のスペイン代表も同じ問題を抱えているが、彼らには引かれた相手を崩し切るアンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバらの個の力があり、われわれにはない。よって横パスを減らし、縦への速いパスがスペースに送り込まれて、FWがそれに飛び込むような、速い攻撃パターンも必要なのだ。ロングボールを放り込むのではなく、裏のスペースへ速いスルーパスを送り込むようなサッカーもぜひ身に付けたい。
来季は「実力主義」「悪平等は嫌いです」と宣言する
水を浴びた状態で練習するのだが、空気が乾いているのでビブスもあっという間に乾いてしまう 【木村浩嗣】
下から持ち上がった年少組と別のクラブからやって来た年長組の間にあった壁を崩し切れず、勝負どころでそこが弱さとなった。内紛があるチームは脱落するというのはプロに限らない。例えばバルセロナ勢とレアル・マドリー勢の対立、イケル・カシージャスとダビド・デ・ヘアのポジション争いなどで内紛がうわさされたスペイン代表だったが、ゴールを挙げた時の祝い方を見ていると雰囲気は良さそうだ。うちのチームの方は、来季は「今年のチーム+下からの持ち上がり組」という構成になりそうなので、この点はずいぶんやりやすくなるだろう。
親との関係の満足度は2。大部分の親とはうまくやれて感謝されもした。だが、一部の親とは対立せざるを得なくなった。彼らの言い分は「息子はもっと試合に出るべき」。出場機会が少なかったのは、練習に来ない、練習態度がもうひとつ、ポジション争いに敗れた、などの理由があるのだが、「子供のやることなんだから大目に……」(本音は『息子のやることなんだから大目に……』)という抗議の声が出た。「来季は別のチームに行く」と言うので「ご勝手に」と言うしかなかった。
シーズンの最初に親たちを呼んで説明会を開いて、自分のやり方を伝えておくべきだった。この点が最大の反省点である。「みんなが仲良く平等に出場機会がある、という方針ではありません。練習に来なかったり、態度がなっていなければ何週連続でも招集外にします」と宣言しておくべきだった。3週連続で招集外にした子は3人いたが、その子たちの親には最後は喜ばれた。招集外という“罰”が効いて見違えるように良くなり、逆に連続招集されるようになったからだ。「実力主義です」「悪平等は嫌いです」というのを最初の言葉にして、来季はシーズンをスタートさせるつもりだ。