ビッグクラブの練習非公開は社会の縮図? スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(5)
わがチームの成績は8チーム中4位
リーガ・エスパニョールでは練習を一般公開しないクラブがどんどん増えている 【写真:ロイター/アフロ】
さて、今回は本業のサッカージャーナリストにも関係するテーマについて書こう。それはプロクラブの練習取材拒否問題だ。取材拒否がなぜ子供のサッカーに関係するのか? なぜなら、練習が公開されないことで子供も指導者の私も学ぶ機会を失うことになるからだ。
今スペインのプロリーグ、リーガ・エスパニョーラでは練習を一般公開しないクラブがどんどん増えている。それもバルセロナやレアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バレンシア、セビージャなどビッグクラブほど見せない(年に1、2回はファンサービスデーとして公開するが)。彼らいわく、「メディアが邪魔だ」「観客がいると集中できない」「練習内容やスタメンが漏れる」……。
せこい話である。こうした大きいクラブは中小クラブの数倍から数十倍の予算で選手を買い集めてリーガを戦っている。少々作戦がばれようが、戦う前から絶対的な優位は揺るがないのだ。むしろ見本として率先して見せるべきだろう。だが、実際は逆。中小のクラブほど練習を見せてくれる。
プロの練習メニューを子供用にアレンジ
スポルティングのサーキットトレーニング。あまり自分たちと変わらないメニューだった。翌々日が試合なのに公開するとは太っ腹で、ビッグクラブも見習ってほしい 【木村浩嗣】
2月と3月、そんなせこいクラブではなく太っ腹のクラブ、レアル・ソシエダ、エイバル、デポルティーボ・デ・ラ・コルーニャ、スポルティング・ヒホンに取材に行った。監督へのインタビューが目的だったが、このうち練習非公開日と重なったデポルティーボはメディア限定で30分間だけ、残り3チームはまったく制限なく練習を見せてくれた。ヒホン市内への帰りにタクシーの運転手さんに「太っ腹だ」と感心していると、「スポルティングなんか地元で愛される小さいクラブなんだ。隠すものなんかあるものか!」と胸を張っていた。
練習メニューはいろいろ盗んできた。スポルティングのウォーミングアップを兼ねたサーキットトレーニング、エイバルの狭いスペースでのミニゲーム&フィジカルトレーニング、デポルティーボとスポルティングの前からプレスを掛ける戦術練習。特別な用具を使っているわけではなく、難易度やインテンシティーを下げる工夫をしてやれば子供でも十分できる。
セビージャに帰ると早速、試してみたものもいくつある。ソシエダは試合翌日でクールダウンが中心だったのでコピーするものはなかったが、背中を向けた状態のFWとDFの1対1など自分たちと同じようなメニューがあったので自信がついた。練習取材が厳しくなる一方で、週末の試合でのウォーミングアップは目の前でやってくれるので、これはいまだにコピーし放題。うちのチームのメニューには、取材や観戦を通して手に入れたプロのメニューをアレンジしたものや、それをヒントに作られたものがいっぱいある。