日程から考えるハリル日本の“第二段階” 予選突破とロシアW杯に向けた強化の融合

河治良幸

侮れないグループBの顔ぶれ

W杯アジア最終予選でグループBに入った日本。対戦相手はどこも侮ることは禁物だ 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 4月12日にマレーシアのクアラルンプールで2018年ロシアワールドカップ(W杯)アジア最終予選の抽選会が行われた。結果は以下の通り。

グループA:イラン、韓国、ウズベキスタン、中国、カタール、シリア
グループB:オーストラリア、日本、サウジアラビア、UAE、イラク、タイ

 日本は同じ第2シードだった韓国、昨年10月の親善試合で1−1の結果ながら苦戦を強いられたイランと同組にならず、第5シードながら実力的には有力候補の1つとなりうるカタールなどを回避できた。また最悪の場合は全ての対戦相手が中東になる可能性もあったが、第1シードからオーストラリア、第6シードからタイが同じグループBに入ってきたことも移動や時差など、トータルで考えればプラス材料だろう。

 もちろんグループBの対戦相手はどこも侮ることは禁物だ。おそらく最強のライバルとなるオーストラリアはもちろんのこと、名将ベルト・ファン・マルバイクのもとで復活の兆しを見せるサウジアラビア、アジアカップの準々決勝で日本代表を敗退に追いやったUAE、そのアジアカップでタフな戦いを強いられたイラク、2次予選でイラクを上回るグループ首位で最終予選に駒を進めてきたタイ。試合前から楽な戦いが予想できるチームは1つも無い。

 ただ、2018年を見据えるならば、いかに最終予選を勝ち抜くかにのみこだわっていれば、そこから先の進化につなげていくことは難しくなる。実際に最終予選のファイナルとなる第10節のサウジアラビア戦は来年の9月5日。ザックジャパン時代であればFIFAコンフェデレーションズカップを経験し、東アジアカップで優勝を飾り、セルビアとベラルーシに遠征した時期に当たるのだ。

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強化のポイントは合宿におけるトレーニング

現在から最終予選の期間をチーム作りの“第二段階”と位置づけるハリルホジッチ監督(左) 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 その間にも来年5月あたりには強豪国との親善試合を組むことは可能だが、本格的にW杯の準備に取りかかるのは10月以降になる。その意味でもアジアでの最終予選を戦いながら、同時に本大会から逆算した強化も行っていかなければいけない。現在から最終予選の期間をチーム作りの“第二段階”と位置づけるハリルホジッチ監督にとって難しい作業になるが、最終予選では大きく3つのポイントがあげられる。

(1)スタンダードを引き上げる強化
 ここまで意識的に取り組んできた“攻守の切り替え”、“1&2タッチの速く正確なパスワーク”、“デュエル(フランス語で決闘を意味する1対1や球際の厳しさ)”といったテーマのスタンダードを2次予選よりさらに引き上げる。2次予選のファイナルと位置づけたホームのシリア戦(3月29日/5−0)で見せたパフォーマンスからさらにレベルアップさせる。

(2)試合の対策も含めたオプションの増強
 対戦相手を分析しながら採用するシステム、選手起用、配置などを使い分け、同時に先を見据えたテストを加える。例えば2次予選のアフガニスタン戦(3月24日/5−0)で試したダイヤモンド型の2トップやハーフナー・マイクの起用、それに応じた戦術変化。五輪世代など新たに台頭してくる戦力の組み込みなどを行い、戦術や選手起用の選択肢を広げる。

(3)アウェーの対策や日程などのプランニング
 アジア特有の厳しい環境を乗り切るための準備や対策。長距離移動やアウェーでの戦いに備え、万全のコンディショニングや暑熱対策、試合ピッチの想定などを行い、良い状態で戦える様に最善を尽くしていく。

 まず(1)と(2)をバランス良く融合することは簡単ではないはずだが、プレーのスタンダードを高めれば、それだけ戦うベースが引き上がり、試合に応じたオプションを加えていきやすくなる。ただ、(1)の強化のためにひたすら4−2−3−1でメンバーを固定していては相手によって戦術面で行き詰まる危険があり、先細りしてしまう。また主力の欠場やコンディションが落ちた時にチームが地盤沈下するおそれも出てくる。

 最終予選では2次予選より厳しい戦いが予想される中で、ハリルホジッチ監督が「リスクのあるトライ」と表現するテスト色の強い起用をしにくい状況になってくるが、新戦力を投入する場合でもいかに勝利を想定できるかが重要になる。その意味でも合宿におけるトレーニングは非常に大事になってくる。なるべく多くの選手を試合で起用できれば理想的だが、試合に出られない選手でも、次につながるものを持ち帰ってもらうチーム強化が重要になる。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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