アフガニスタン戦でのリスク&トライ 申し分ない「5−0」というスコアの背景

宇都宮徹壱

アフガニスタン戦の位置づけとは?

5−0でアフガニスタンに快勝した日本代表 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本代表戦の前売りチケットが、4年ぶりに完売とならなかったらしい。前回、売れ残ったのは、2012年5月23日にエコパスタジアムで行われたアゼルバイジャンとの親善試合(2−0で日本が勝利)。今回は相手がアフガニスタンとはいえ、一応は公式戦である。ワールドカップ(W杯)アジア2次予選は、昨年11月17日から4カ月も間が空いていたので、ライトなファンは忘れてしまっていたのかもしれない。グループEの首位に立つ日本は、3月24日にアフガニスタン(現在4位)と、29日にシリア(同2位)と、いずれもホームで対戦。今回の5−0で勝利を収めたアフガニスタン戦に触れる前に、ここまでの2次予選の概況をおさらいしておこう。

 6試合を終えて、5勝1分けの勝ち点16でトップを維持している日本。だが、2次予選の1位通過が決定しているわけではない。シリアが5勝1敗の勝ち点15で、1ポイント差につけているからだ。最終予選に進出できるのは、各グループの1位8チーム、そして各グループの2位の中で成績上位4チームの計12チーム(ちなみに、現時点で1位通過を決めているのはカタールと韓国のみで、いずれも6戦全勝)。日本がアフガニスタンに勝利し、裏のゲームでシリアがカンボジアに敗れれば、24日の時点で日本の1位抜けが決まる。が、その可能性はかなり低いと見るべきだろう。

 とはいえ、それでも日本は対戦順では恵まれていたと言える。仮に、シリア戦が24日だったら、ちょっと厄介なことになっていただろう。地力では日本が上回るのは間違いないが(前回の対戦は3−0で日本が勝利)、4カ月のブランクを経ていきなり頂上決戦を迎えるのは、心理的に負荷がかかる試合になっていたはずだ。その点、アフガニスタンとは前回対戦時に6−0で大勝した良いイメージがあるし、監督が変わってチームとしての完成度も決して高いとは言えない。昨年11月に就任した、クロアチア人のペタル・セグルト監督も「日本と私たちの間では非常に大きな差がある」と素直に認めている。

 発表されたリストを見ると、アフガニスタンの24名の招集メンバーのうち、実に5人が「無所属」となっていた。国内組は5人、残りは海外でプレーしているが、聞いたことのないクラブ名ばかりが並ぶ(私が知っていたのは、FCザールブリュッケン=ドイツ4部のみ)。聞くところによると、今回初めて国外に出た選手もちらほらいるそうだ。もっとも、彼らは彼らで19年のアジアカップ出場という明確な目標があるわけで(今予選は、アジアカップ予選も兼ねている)、決してモチベーションが低いわけではない。セグルト監督も語っている。「センセーショナルなことが起きるのもサッカーだ」と。

あえて導入された新システム

ハリルホジッチ監督は本田(左)や香川の疲労を考慮しつつ、アフガニスタン戦を新システムや新戦力を試す場と捉えた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そんなアフガニスタンに対し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「(これまでとは)違うオーガナイズにトライしたい」と前日会見で述べている。さらに、試合2日前に合流した香川真司と本田圭佑については「疲労を考慮しなければならない。リスクは取らないために控えにしたい」とも。シリアとの直接対決を見据えつつ、最終予選に向けて新システムや新戦力を試すならば、このアフガニスタン戦が絶好の機会と捉えたようだ。さまざまな憶測が流れる中、指揮官が選んだスターティングイレブンは以下のとおり。

 GK東口順昭。DFは右から、酒井宏樹、吉田麻也、森重真人、長友佑都。中盤はワンボランチに長谷部誠、右に原口元気、左に柏木陽介、トップ下に清武弘嗣。そしてツートップに岡崎慎司と金崎夢生。就任14試合目にして初めて、ハリルホジッチ監督は前線を2枚とし、中盤をダイヤモンド型にした4−4−2(あるいは4−3−1−2)を採用した。国内組と海外組を問わず、いずれもコンディション良好な選手が起用されているという点では、顔ぶれに目新しさはない。それだけに、限られた準備期間の中で導入された新システムが、果たしてどれだけ機能するのかが注目された。

 その意味で言えば、前半は期待外れの感が否めなかった。「選手たちがうまくやろうとし過ぎていたため、パスや判断で正確さを欠いてしまった」という指揮官の言葉どおり、ポゼッションとシュート数で相手を圧倒するものの、なかなかネットを揺らすまでには至らず。加えてアフガニスタンは、8人のディフェンスラインを敷いて強固なブロックを形成していたため、日本のシュートはことごとく相手守備陣に阻まれてしまう。前半29分には、相手選手の負傷でプレーが止まっているタイミングで、日本はGKを含む11人全員がピッチ上でディスカッションするシーンも見られた。

「このまま無得点でハーフタイムを迎えるのは何としても避けたい──」。日本の多くのファンが、シンガポールとの初戦(0−0)のことが脳裏をよぎった前半43分、ついに均衡が崩れる。清武からのパスをペナルティーエリア手前で受けた岡崎が、巧みな反転から背後の相手DF2人をかわし、さらに利き足でない左足を振り抜いてネットを突き刺す。「ターンを意識していたので、それが結構良い形になったかな」とは、決めた当人の弁。岡崎にとっては、昨年10月8日のシリア戦以来となる通算48ゴール目が先制点となり、日本は1点リードで前半を折り返すこととなった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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