初開催「プレミア12」に関心なかった米国 今後へ最高峰MLB選手の参加は不可欠

杉浦大介

プレミア12はイギリスのサッカー!?

メジャーでの監督経験があるランドルフ監督の下、準優勝に輝いたアメリカだが、母国ではメジャーリーガーの参加がなく、プレミア12の報道はほとんど皆無だったという 【Getty Images Sport】

「プレミア? イギリスのサッカーだろう?」

 筆者が「世界野球プレミア12」について意見を求めると、あるニューヨークの現地記者からそんな素っ頓狂な答えが返ってきた。最初は凡庸なアメリカンジョークかと思ったが、本気だった様子。“アジアで行われたベースボールの新たな世界大会”と説明を加えると、「ああ、その大会のことは聞いたことがある。ほとんど興味はなかったけど」という答えだった。この記者は極端に思えるかもしれない。しかし、普段はMLBを取材している4〜5人の記者に意見を求めても、ほぼ例外なく上記の後半部分と似たような反応だった。

「行われているのは知っていたが、興味はほとんどなかった」
「イベントの存在を聞いてはいた。ただ、特に注意は払わなかった」
 1年を通じて国内スポーツが盛んなアメリカでは、MLB終了と同時に息つく間もなくNFL、NBA、大学スポーツに主流が移っていく。そんな状況下で、プレミア12の報道はほぼ皆無。『MLB TV』ですらもテレビ中継は行わず、『MLB.com』『CBSスポーツ』などが申し訳程度に結果を伝えたのが目立つくらいだった。あとは今オフ中のメジャーの移籍が予想される前田健太のピッチング内容が簡単に伝えられたくらいか。

国際大会に熱狂的ではないお国柄

 もともと国際大会にはそこまで熱狂的ではないお国柄であり、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも否定論は依然として多い。それでもWBCはアメリカ国内開催とあって、少なくとも議論が成り立つだけの知名度、注目度はあった。しかし、プレミア12に関しては、かなり熱心なベースボールファンでもその存在自体を知らないものが大半だろう。理由はご想像通り、シンプルに、メジャーリーガーが参加しなかったからである。

「MLBは11月に行われるプレミア12トーナメントにおいて、40人ロースターに含まれない選手の出場を認めることで合意した」
 8月31日にMLB広報部の公式アカウントからそんなツイートが送られてきた。この時点で、アメリカのメディア、ファンが興味を持つ可能性は事実上消滅。メジャーリーガー不参加の背景にあった要因ははっきりとは語られていない。

収益問題や開催時期のリスク

 WBCを最高峰の世界大会としてまずは確立させたいMLBの思惑は大きかったのだろう。また、MLB主催のイベントだったWBCとは異なり、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)が陣頭指揮をとるプレミア12の収益はメジャーのチームに流れてこないという事情もある。

 選手側から見ても、プレミア12の開幕はプレーオフ不出場チームの最終戦から1カ月以上も後であり、準備は簡単ではない。WBCでは1000〜2000万ドルがかかったという保険の問題も不透明なまま。何より、近年は選手の健康維持が注目されている中で、この時期に、しかも不慣れな極東の地で、エキシビションではなく真剣勝負を行うのはリスクが大きく感じられる。これらのすべてが考慮された上で、準備の困難な第1回の不参加を決めたのであれば理解できるところではある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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