メジャー不在も層の厚さを見せる米国 怖いのは打撃陣、余裕を持った戦いを

永塚和志

核はパンアメリカン大会銀メダルメンバー

MLBで通算124試合に出場しているパストルニッキー(写真は2014年のもの) 【Getty Images】

 プレミア12を戦う侍ジャパン。14日には米国との対戦がある。

 しかし今大会はメジャーリーガーが参戦していないとあって、何とも実力を測りにくいところがある。野球の母国が今大会に派遣してきたチームはどういった選手たちで構成されているのか、紹介したい。

 チームの大半を占めるのはマイナーリーグでプレーする選手で、しかもマイナーの中ではピラミッドの上位にあるトリプルAではなくダブルAクラスの選手が多い。ただ、メジャーリーグ経験者も9人いて、彼らがチームの中心であると言える。

 タイラー・パストルニッキーはその一人で、2012年から14年にかけてアトランタ・ブレーブスでプレー。通算で124試合に出場している。08年ドラフトの5巡目でトロント・ブルージェイズに指名された彼はまだ25歳と若く、このチームの打撃陣では実力はトップクラスだ。父のクリフもカンザスシティ・ロイヤルズでプレーしたメジャーリーガーだったということも付しておく。

 アリゾナでの強化試合から今大会にかけて最も波にのっているのが3番打者のブレット・エイブナーだ。ロイヤルズ傘下のトリプルAチームでプレーする彼はメジャー経験こそないものの、マイナーではここ5年間で73本塁打を放っているパワーヒッターだ。今季は3割3厘、19本塁打、81打点と活躍した。今大会でも試合終盤の勝負強さが光っており、日本からすれば要注意選手である。

 エイブナーの後ろ、4番を打つのがダン・ブラック。彼は今年、韓国リーグのKTウィズに所属し、打率3割3分3厘、12本塁打、32打点という成績を残した。選球眼が良く、かつパワーもあるというやっかいな打者だ。アジア人投手との対戦も苦にしないだろう。

 エイブナーやパストルニッキーらは銀メダルに輝いた今年のパンアメリカン大会でも米国代表として活躍した。その意味では彼らもチームの核となる存在だ。

1番打者・メイは嫌な選手になりそう

 他方で、今回リードオフマンを担うジェイコブ・メイという選手の評価が高い。パワーを全面に出した選手が多い中で、彼はスピードで相手をかく乱するタイプの選手だ。今季はダブルAで37盗塁をマークしている。今回のプレミア12のドミニカ共和国戦では三盗を含む2つの盗塁を記録している。ベネズエラ戦では本塁打も放っており、そのパンチ力も侮れない。センターでの守備も秀逸で、相手にとって攻守で嫌な選手だ。

 メイやマイナーリーグでここ4年間で33本塁打を放っているブレット・フィリップスらは近い将来のメジャー行きを期待されるトッププロスペクト(最有望株)。メジャーリーグなどのスカウトも数多く集うプレミア12の舞台で、彼ら自身のモチベーションも高い。

 米国にとって痛いのは、今回選抜した面々の中でも最も若手の期待株と目されていたギャビン・セッチーニという遊撃手が肩の故障で大会直前にロースターを外れたことだ。12年メジャーリーグドラフトの1巡12番目指名でメッツに指名されたセッチーニは今年ダブルAで打率3割1分7厘、出塁率3割7分7厘、長打率4割4分2厘とキャリア最高のシーズンを送った。将来おそらく必ずメジャーの舞台で見ることになるであろうセッチーニの不在は、米国代表にとってかなりの戦力ダウンと見てもいいだろう。

 投手陣は、ケイシー・コールマン、ジャレット・グルーべ、ゼケ・スプライルといった面々にメジャー経験があり、首脳陣の信頼が寄せられる。ブルペンにはカナダとの強化試合で好投したアンソニー・バスケスというベテランの左腕が控える。

 他にはデイナ・イヴランド、アーロン・ラフィー、ジェイク・バレットといった投手が後に控えている。層の厚さ、さまざまな投手をそろえるという面では富んでいる言えるだろう。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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