3位の侍ジャパンが世界一へ必要なもの プレミア12で明確になった課題
プレミア12で初の真剣采配を振った小久保監督。3位に終わったものの、2017年WBCへの続投が決まった 【Getty Images】
「3位という結果に関しては、当初の目標を達成できなかったという点で悔しい思いでいっぱいですね」
準決勝の韓国戦で「人生で一番重い1敗」を喫した指揮官だが、今大会後、自ら進退伺を出すことはなかった。契約は2017年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで残っており、現体制はこのまま続くことになる。
真剣勝負の采配は初だった小久保監督
会見の冒頭で「今後に生かすための課題」を聞かれた小久保監督は、8秒間の沈黙の後に考えをこうまとめている。
「ピッチャー陣にある程度役割を伝えたほうがいいのかなとは思っていますけど。それくらいですかね」
この言葉を象徴するのが、逆転劇を許した準決勝・韓国戦の9回だ。指揮官が言うピッチャー陣とは、ブルペンのことだろう。増井浩俊は準決勝で痛恨の勝ち越しタイムリーを浴びた後、沈痛な表情でこう振り返っている。
「(登板が)いつ来るかわからないというところで、気が張っていた部分は常にあったかなと思います」
ただし、こうなることはある程度予想できていた。増井、松井裕樹、山崎康晃、澤村拓一という所属チームでクローザーを務める4投手について、状況に合わせて調子の良い者を使うとしていたからだ。
さらに言えば、侍ジャパン以外で采配を振った経験のない小久保監督にとって、親善試合的な要素の強かった昨年の日米野球や今春の欧州代表戦とは異なる、重圧のかかる“真剣勝負”の舞台は初めてだった。そうした指揮官に対し、周囲はどれくらいサポートできていたのか。
鹿取義隆投手コーチは現役時代にクローザーとして活躍した後、巨人で指導者経験を誇るだけではなく、ドジャース傘下のマイナーチームで教えたこともある。鹿取コーチが投手交代の主導権を握るやり方もあったはずだ。
指揮官をカバーできなかった組織
「9回は則本(昂大)で行こうと決めていました。無死満塁になった時点で松井と増井の2人を用意していたので、あそこは(相手打者が)左になったときに鹿取コーチから『2人できています』と言われたので、『松井で行きましょう』と僕が決めました」
指揮官の言葉から判断すると、鹿取コーチがブルペンと連絡をとりながら投入できるリリーフ陣を用意し、その中から小久保監督が決断を下していた。結果、無死満塁で今季の与四球率3.48と制球に課題のある松井を投入し、押し出し四球につながったのだ。
もちろん、これは結果論だ。しかし、正捕手で主将の嶋基宏が9回の投手陣について「結果がすべてなので」と語ったように、プロの仕事は結果で語るべきである。端的に言えば、監督経験に乏しいとわかっている指揮官を侍ジャパンは組織としてカバーできず、韓国に土壇場で3点差をひっくり返されたのだ。