MLBから見たプレミア12の真実 『世界一を決める大会』の認識はない

菊地慶剛

不参加表明は広報がツイートしただけ

11月開催のプレミア12にメジャー選手は参加しない。MLBにとって、シーズン終了後の選手派遣は現実的ではないようだ 【Getty Images】

 つい先日のことだ。決して大きな扱いではなかったが、スポーツ各紙が「プレミア12にメジャー選手が参加しない」と報じたのをご記憶だろうか。

 プレミア12とは11月に開催されるWBSC(世界野球ソフトボール連盟)が主催する新たな国際大会だ。記念すべき第1回大会は日本と台湾の共催となることもあり、侍ジャパンを常設化したNPB(日本野球機構)は、早くからプレミア12優勝を目標に掲げ、気勢を上げてきた。

 そのプレミア12に、メジャー選手が参加しないことが今回明らかになった(40人枠選手は参加不可能。マイナー選手もチームが許可した選手のみ)わけだが、実はMLB側は何かミーティングを開いて協議を行ったのではなく、単にMLB広報の公式アカウントを使ってツイートしただけで、MLBは公式リリースすら出していない状況なのだ。

 これが何を意味するものなのか? 現場で取材をしながら肌で感じたことなのだが、MLBはもとからプレミア12を意識している様子はなかったと言わざるを得ない。

 もし仮にMLBがプレミア12にメジャー選手派遣を考えていたのなら、選手会の承認も必要なため必ず事前協議をしなければならない。その協議が水面下で行われたとしても、大抵は選手間でプレミア12に出場するかどうかの噂(うわさ)がわれわれの元に漏れ聞こえてくるのが常なのだが(WBC=ワールド・ベースボール・クラシックや日米野球開催の年はシーズン中から選手間で出場についてまめに意見交換している)、今シーズンに限っては選手から一切そんな話を聞いたことがなかった。選手の中にはプレミア12の存在すら知らない者もいるのではないかと思う。

11月の国際大会への選手派遣は難しい

 そもそもMLBにとって、11月開催の国際大会への選手派遣は極端な言い方ではあるが、一考の価値もないことなのだ。それはWBCの開催時期をめぐって答弁したバド・セリグ前コミッショナーの発言に集約されている。

「現在のシーズン運営上では、この時期(3月)以外に開催するのは難しい。シーズン終了後では長いシーズンを戦った選手に負担がかかるし、すでに季節が冬に入っており野球をするのに適していない。カリブや南米で行うというオプションもあるが、安全性や球場のキャパシティなどの懸案事項が起こってしまう」

 この発言は、WBCをあくまで自国開催するという視点から述べられているのは否めない部分もある。とはいえ、WBCですらMLBとチーム側で足並みがそろわず対決姿勢を見せているのに、シーズンが終わった11月に開催される国際大会に選手を派遣したいなどと思うチームは皆無と言っていい。

 現在のメジャーの潮流は、シーズン終了後から年内はしっかり休養するという意識が高い。特に投手の場合、この時期にしかヒジと肩を休ませる時期がないのだ。昨年まで14年連続200イニング以上を投げ続けているマーク・バーリー投手(ブルージェイズ)も以下のように話している。

「オフは特別なことをやっているわけではない。休むことなく(体力維持の)トレーニングを続けながら、しっかりヒジと肩を休養させる。年明けまでボールを握ることはない」

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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