川淵「これから各チーム階層分けをする」 第4回タスクフォース会議 報告記者会見

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川淵「移籍によってチームは大きく変わる」

川淵チェアマンの高血圧を心配し「必ず薬を持ち歩いている」と話すバイス・コーチェアマンの顔からは、タスクフォースメンバーの信頼関係がうかがえた 【スポーツナビ】

――第1回タスクフォースの後に「入りたいと言ったら排除はしない」という言葉があった。参入申請をした46チームについて、1部から3部のいずれかへの参入は確定的と認識していいのか?

川淵 47チームになると思いますけれども、FIBAから言われているのは1部リーグが「14プラスマイナス2」と言われているわけですね。2部については何チームとは言われていませんが、最低限プロとしてわれわれが認めることができる財政状況なり、環境、選手を見定めて、20前後かなと思っています。そうなると残りは「13」というところですよね。2部というのは最低限プロとして活動してほしいし、1部を目指してほしい。しかし3部はサッカーで言うとJFL(日本フットボールリーグ)と同じ感じで、アマチュアとプロにまだなり切れていないけれど、いずれ上がっていくであろうという、アマチュアとプロの混在が13チームです。申し込まれたチームは全てその中に包含できると思いますし、初めにお約束した通り包含します。「ナンボなんでもこれは……」というチームは、アマチュアに徹して無駄な経費も使わず、リーグ戦を戦うから始めればいいし、それは3部にいて何もおかしくないんじゃないかと思います。

――明日、リンク栃木ブレックスvs.千葉ジェッツ戦を観戦して、知事や市長と対談する予定だが、試合に対してどんな期待をしているのか? また、知事や市長とはどんな会談にしたいのか?

川淵 NBLは東芝と千葉の試合を見たけれど、どちらかというと企業チームだなというイメージでしたね。チアガールはいましたけれど。その中でリンク栃木は企業チームとは一味違うエンターテインメントをやるだろうと思っていますし、そこに田臥(勇太)がいるので、彼を見るのがすごく楽しみです。NBLにもこんなエンターテインメントをできるチームがあるんだなというのが、見られたらハッピーです。

 そして知事、市長とお会いするのは「このチームをよろしくお願いします」という話があると思う。アリーナの新設・増設、将来の展望について、僕としてはぜひ栃木の人たちが魅力あるアリーナでバスケットボールを観戦できるような、そういった環境の整備をお願いするというところです。

――チームの振り分けについて、戦力だけではないとのことだが、点差が極端に開いたり、戦力差があるとバスケットの楽しみが消えてしまう。戦力均衡についてはどう考えているのか?

川淵 Jリーグのときも、鹿島と清水がプロとしてやっていけるのかと言われました(編注:鹿島と清水は、Jリーグの前身である日本サッカーリーグの1部に入っていなかった)。前段で3年かけてプロ化はスタートしましたから、外国人を3人取れて、新人を1年間に5人取れるという、全てちゃんと理論武装をして、戦力的に問題ないという計算の元にやっているんです。バスケの選手(ロースター)はたった12人です。サッカーの場合は25人から30人ですからね。

 日本代表に値する、国際試合を戦うに値する選手がどれだけいるか、決して多くないと聞いています。1部・2部に振り分けがされたときに、当然移籍が行われるべきです。移籍によって、チームは大きく変わっていきます。移籍金をどう決めて、選手は取られるけれどこれだけのお金をもらえればいいかと納得できるような、そんな高額な移籍金は出せないと思いますけれど……。チーム間でそういった話し合いをしてもらって、決めていけばいいと思います。そういった決定を僕が率先してやるつもりはなくて、チームの責任者がそういった話し合いで決めていけばいいと思います。

 移籍が(新リーグが発足して1部・2部と振り分けられるときに)積極的に起こらなければ、戦力の均衡化はないと思っています。例えばbjリーグは外国人のオンザコートが3人ですが、2人しか駄目だよと言われたら優秀な日本人を取る可能性がありますね。東芝あたりの優秀な選手があまり試合に出られないなら、引っこ抜けばいいわけでしょ? 東芝さんの名前を出して悪いけれど、具体的に言わないと話は通じないからね(笑)。そういうことで、くすぶっていた選手に活躍する場が与えられて、変わるということがあり得るんです。移籍は今回の1部・2部・3部を決める上で、一番重要な要素だと思います。

バイス「私の不安は日本が強くなり過ぎること」

――今日NBLの企業5チームから入会申請が出されました。懸念されていた別法人の立ち上げ、社員選手の待遇についてどういう話し合いで折り合いがついたのか? どういう意見をしたから申請をしたのか?

川淵 あまり相談に来ていませんよ。僕らが要求する条件を確保できると思ったから申し込んできたということです。「法人化しない限りは絶対に認めない」と言っているから、法人化の努力をするという前提で(今日の申請に)来ている。東芝さんも社員選手ばかりでも、社員選手が同じ給料でも最低年俸300万円を超えていればプロと言ってもいいじゃないかって、いろいろモノの考え方で解決する問題はいっぱいありますね。

 あまり具体的な相談があって、今日の登録になったということではありません。彼らなりに、例えばホームアリーナをどこにするかといった悩みは結構あって、そこはわれわれも相談に乗りながら、良い解決策を見いだしていきたいと思います。

――1部・2部に参入するチームを振り分けるときには、成績はまったく勘案しないのか? 発展性、チーム性など、具体的にどの事項を重視するか?

川淵 1勝40敗のチームと40勝1敗は同じに考えられないですよね。それは常識の範囲内で判断していただければありがたい。成績で負けているから排除するということのようなやり方は、できるだけしたくないということです。10勝、20勝、30勝とどこを境にするかと言ったら、そんな境はありません。トータル的にこのチームがどういうふうに発展していくかを判断します。例えば14チームを選ぶときに、10チームまではスッと行くかもしれませんね。あとの4チームをどうするかと言ったら、そこの線の引き方が難しい。今の戦力でこちらを重視するかとか、その都度選ぶポイントが変わってくる可能性があります。一概には言えません。ただどこが弱いから入れないんだということとはちょっと違いますよと。

 例えば環境が整って、来年くらいからガッと行きそうだとなったら、そういうチームをちゅうちょせずに入れていくことだってありますよと。そういうことです。

――10何年も動かなかった問題がドラマティックに動き、落ち着いた。川淵チェアマンの血圧が上がって……という話を聞き心配しているが、そこも落ち着いてきたか?

川淵 皆さんがどう思っているか知らないけれど、僕は真剣なんですよね。打ち込んじゃうんですよね。だから寝ても覚めてもバスケットのことばかりが常に頭にありました。最初に皆さんの前で、bjリーグやNBLの代表者を集めて話をしましたね。あのビデオを見たら目も真っ赤、顔も真っ赤……。自分が見ても「これは脳出血かなんかで倒れるな」という印象があって、事実そうだったんですよ。家に帰ったら(血圧が)200の100とかね。女房が辞めてくれと言うけれど、乗りかかった船だからというので……。文科省さんも何とかしっかりしてほしいというし、FIBAから全面的にバックアップしていただいている。JOC、体協、トップリーグ連携機構、境田先生とかいろいろな人がバックアップしてくれていて、かなり強力に改革が推し進められる環境だったわけでしょう。にもかかわらずそれだけ血圧が高かったんですよ。それを見て、大河が「これは命が危ない。Jリーグを辞めても、手伝わないと僕の命に係わる」ということで決断してくれて、僕の血圧が安定した。これは本当の話です。

 それだけ真剣に考えていると、ほとんどの人は思ってないでしょう。「サッカー界にいればいいのに、いい歳をして」とか、そういうのを読むとまた血圧が上がるので……。そんな話はよしましょう(笑)

――半年間でここまで事態が劇的に動いたことをどう考えるか?

バイス 今の川淵さんの話を補足するが、川淵さんは怒りを原動力にしているのではないかと個人的には思っている。言葉は悪いが、バスケに集中すればするほど“嫌な人”になっていたのだろう。しかし、私は良い人間だ(笑)。実は川淵さんの血圧が上がり過ぎたときのために、必ず高血圧用の薬を持ち歩くようにしている(※スーツの胸ポケットから薬のパッケージを取り出す)。われわれはお互いに凸と凹でいい具合にサポートし合っているのではないだろうか。

 さて質問に答えよう。ドイツでは物の例えによくダチョウが挙げられる。ダチョウは怖がると頭を砂に埋めて、見て見ぬふりをする。やっとそのダチョウが、ようやく砂から頭を出してきたのではないかと思う。

 過去10年を見ると、誰かが何かを進めようとすると「ちょっと待てよ」「もう少し慎重にやろうよ」と、お互いに邪魔し合っていたところもあったのではないか。しかしこの数カ月間で、ドラスティックに動いているように見えるというのは、喜ばしいことです。個人的には会長代行である梅野(哲雄)さんにもお礼を申し上げたい。厳しい過渡期に彼が尽力し、サポートしてくれたおかげで、今のような体制作りができている。

 私の唯一の不安は日本が強くなり過ぎて、世界選手権や五輪で日本がドイツを打ち負かして、私がドイツ国民から総スカンを食らうことだ。

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