完全にバルサを上回ったレアル・マドリー フットボール界の勢力図に現れた変化
深刻なまでに色あせるバルセロナ
今回のエル・クラシコは、レアル・マドリーが特別な時を迎えていることを改めて証明する試合となった 【写真:ロイター/アフロ】
本コラムではこれまで何度も指摘してきたことだが、ルイス・エンリケ率いる現在のバルセロナはティト・ビラノバの指揮下にあった1年半前とは大きく異なる、ヘラルド・マルティーノ前監督時代の延長線上にあるチームだ。しかもアストゥリアス出身の新監督は前任者のアルゼンチン人よりはるかに充実した戦力補強を実現できたにもかかわらず、今のところその利益を生かすことができていない。
すでにバルセロナは深刻なまでに色あせ、光をほとんど放てなくなってしまったにもかかわらず、今も鮮やかな色彩の光を放っていると信じたがる人々の目を欺いてきた。“未知の存在”だったマルティーノの後釜としてエンリケの新監督就任を望んできたこれらの人々は、過去数年と同じくサンティアゴ・ベルナベウでの大一番では全盛期のプレーが復活するに違いないと信じてやまなかった。なにせ今回のクラシコはリオネル・メッシにとってリーガ・エスパニョーラ史に残る歴代最多得点記録の更新が懸かった一戦であり、またルイス・スアレスにとっては待ちに待った公式戦デビューだったのだ。
だがチャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグ突破が懸かったパリ・サンジェルマン戦と同じく、この日のバルセロナも時折見せるショートパスをつないでのゲームコントロールで過去の面影を見せはしたものの、もはや強かった頃のプレーを取り戻すことは不可能だった。
チームは以前あったプレーの安定感がなくなり、選手たちは自分たちのプレーに対する揺るぎなき自信を失ってしまった。司令塔のシャビは90分間戦える状態にはなく、メッシも時折輝きを発するものの全盛期の彼とはほど遠く、アンドレス・イニエスタも本来のレベルにはない。スアレスをこれだけ困難な試合でデビューさせる賭けも、結果的には時期尚早の印象だけが残った。
正しい方向に進んでいるレアル・マドリー
試合前の選手入場時にビッグフラッグでデシマをアピールしたレアル・マドリーのサポーター 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
ジョゼ・モウリーニョがクラブを去って以降、スターぞろいのロッカールームは再び友好的で対立や口撃がほとんどない平静さを取り戻した。ピッチ上ではライバルのミスにつけ込むカウンタースタイルから脱却し、よりボールポゼッションを通した綿密なゲームコントロールを重視するようになった。フィジカルと機動力を武器とするMFがチームを去り、より柔軟性のあるトニ・クロースやハメス・ロドリゲスが先発に名を連ねるようになったのもそのためだ。
そして基本的なことだが、より頻繁に、より多くのチームメートのフォローを受けるという不可欠な環境の変化により、クリスティアーノ・ロナウドはかつてないペースでゴールを積み重ねている。
リーガ・エスパニョーラの9節終了時点で33ゴールを量産している現在のレアル・マドリーは、ネイマールに開始早々の先制弾を決められた後もまったく動じることがなかった。とりわけアンフィールドにてリバプールに快勝したCLの大一番の直後だったこともあり、彼らは失点後も自分たちの可能性を信じて戦い、すぐに同点に追いつくことができた。その後の猛攻はバルセロナにとって抑えきれないもので、アンチェロッティが逃げ切り態勢に入るまでにはゴールラッシュに至ってもおかしくない時間帯が何度もあった。
違いは試合結果のみならず
レアル・マドリーは3−1という結果だけでなく、プレー、システム、ポテンシャル、チーム力といったすべての要素でバルセロナを完全に上回っていた 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
スアレスは両ウイングの間に位置する9番としてプレーするのか、ネイマールとピッチを分かつ2トップの一角を務めるのか、今後その役割を明確にしていく必要があるだろう。またイニエスタとメッシは全盛期の彼らとはほど遠い状態にあり、それがチーム全体の機動力や攻守の切り替えスピードの低下をもたらしている。そうでなくともチームは、強かった頃のダイナミズムを失って久しいというのに。
全盛期の主力メンバーがいまだ多数残っているとはいえ、バルセロナのサイクルは確実に終わりに近づいている。そのため今後は選手の入れ替えだけでなく、既存のメンバーに適したシステムや戦術的バリエーションを見いだしていく必要がある。そして、それはクラブのアイデンティティーであるプレースタイルを踏襲しながらも、チームがトップレベルでの競争力を保ち続けるために必要な新たなアイデアを盛り込んだものでなければならない。
世界最高の資金力はそのままに、今日のレアル・マドリーはクラブの歴史と伝統に即したフットボール哲学、そしてその価値観を正確にプレーに反映できる人材を手にしたことで、とうとうバルセロナをプレー、システム、ポテンシャル、チーム力といった要素で上回るに至った。
フットボール界の勢力図に重要な変化をもたらすきっかけとなったのは、今回のクラシコで手にした3−1の勝利だけでなく、宿敵を上回ったそれらすべての要素なのである。
(翻訳:工藤拓)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ