“エース受難”で史上最低?の最多勝争い、「助っ人沢村賞」「中継ぎ最多勝」も

ベースボール・タイムズ

昨年15勝の3投手が苦しむパ・リーグ

昨年は沢村賞の選考基準7項目を全てクリアしたオリックス・金子。今季は12勝を挙げるも昨年の成績を上回るのは厳しい状況だ 【写真は共同】

 パ・リーグのエースたちも苦しんだ。昨季は田中の陰で、金子、則本、攝津正(ソフトバンク)の3人が15勝をマークした。今季はその3人が最多勝争いの中心になると目されていたが、筆頭候補だった金子が開幕7試合に登板した時点で2勝3敗と黒星先行。5月中旬以降は投球内容に白星も伴い、8月には月間3勝を挙げて最多勝部門でも先頭に並んだが、9月3日のソフトバンク戦では今季ワーストの6失点で降板して単独トップならず。残り4回と予想される登板試合で1勝でも挙げれば、史上最低最多勝の13勝には達するが、昨季を上回る16勝を挙げるためには4戦全勝が必要になるという状況だ。
 
 プロ2年目ながら楽天の新エースに君臨した則本は、夏場にブレーキがかかった。6月までに破竹の勢いで9勝を挙げたが、そこから2ケタ勝利に5度も足踏みし、8月上旬には中継ぎに配置転換。先発復帰後は本来の力強いピッチングを披露しているが、8日現在で11勝では昨季の“自分超え”は絶望的だ。もう一人の有力候補であった攝津は、5月に右肩の筋疲労で約1カ月、8月にも右手親指の打撲で登録抹消。ここまで9勝(6敗)で、規定投球回にも達していない。開幕前にロッテの“ダブルエース”と期待された成瀬善久と涌井秀章は、それぞれ8勝と6勝。日本ハムのエースのはずだった吉川光夫は2勝とふがいない数字が並ぶ。

 そんな中、高卒6年目の西が開幕8連勝を飾って最多勝レースの先頭を突っ走ってきたが、後半戦に入って6試合で1勝4敗と急失速。勢い的には8月31日、9月7日と自身2連勝で11勝目を挙げた西武のエース、岸孝之に分があるが、いずれにしても最多勝レースが昨季よりもスローペースであることに違いはない。

メッセが50年ぶりの助っ人沢村賞?

 ここで最多勝とは別に問題となるのが、沢村賞である。10年から沢村賞選考委員を務める北別府学氏は言う。

「今年は非常に悩みますね。“該当者なし”という可能性もゼロじゃない。今季はセ・パともに優勝争いが激しいので、個人タイトルを優先するわけにもいかないですからね。気持ち的には日本人投手に頑張ってもらいたいですけど、もちろん外国人投手も対象になる」

 投手にとって最高の栄誉である同賞の選考基準は、シーズン15勝以上に加え、登板25試合、10完投、勝率6割、200イニング、150奪三振、防御率2.50――。昨季、基準全7項目をクリアした金子が現時点での最有力候補になるが、このまま15勝未満に終わった場合、今季クリアできそうなのは4項目(登板試合数、勝率、奪三振、防御率)のみ。2000年代に入ってからの沢村賞受賞者はすべて15勝以上をマークしており、このままでは00年以来14年ぶりの「該当者なし」となる可能性もある。また、その金子に続くのが、3項目(登板試合数、200イニング、奪三振)のクリアが濃厚なメッセンジャー。今後の成績次第では勝率も基準クリアが可能で、もしかしたら64年のバッキー(阪神)以来、50年ぶり史上2人目となる助っ人投手の沢村賞受賞もあり得ない話ではない。

 最多勝に話を戻すと、セ・リーグでは又吉克樹(中日)、中田廉(広島)という中継ぎ勢が現在9勝を挙げている。このまま先発陣が白星を伸ばせないままでいると、あれよあれよという間に彼らが最多勝レースのトップに躍り出ることも考えられる。中継ぎ投手が最多勝を獲得すれば、88年にリリーフで55試合に登板して18勝を挙げた伊東昭光(ヤクルト)以来、史上2度目の“珍事”となる。

 果たして、結末はいかに――。2014年が“史上最低”と呼ばれないためにも、残り1カ月、各球団の先発投手たちのラストスパートに期待したい。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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