“エース受難”で史上最低?の最多勝争い、「助っ人沢村賞」「中継ぎ最多勝」も

ベースボール・タイムズ

セ・リーグ最多の11勝を挙げている阪神・メッセンジャー。他投手の成績によっては、50年ぶりの助っ人沢村賞の可能性もある 【写真は共同】

 シーズンが佳境を迎えようとする中、個人タイトルの行方にも注目が集まっている。今季はどの部門も混戦模様だが、その中で最多勝争いは近年まれにみる大混戦となっている。そこで見えてくるのは、各球団のエースたちの苦戦ぶり――。“史上最低”で終わりかねない2014年の最多勝争いの結末を予想し、シーズン終了後に選考される沢村賞についても考えたい。

ペースが上がらない最多勝争い

 昨季は田中将大(当時、東北楽天)が24勝、小川泰弘(東京ヤクルト)が16勝を挙げ、堂々とゴールした最多勝レース。内容、結果ともに文句なし。過去の最多勝の面々と比べても非常に高レベルなピッチングでのタイトル獲得だった。

 だが、今季の最多勝レースはなかなかペースが上がってこない。8日現在で、セ・リーグのトップは、メッセンジャー(阪神)、久保康友、井納翔一(ともに横浜DeNA)の3人が11勝で並び、その後を前田健太(広島)、山井大介(中日)、石川雅規(ヤクルト)が10勝で追っているという状況だ。

 一方のパ・リーグでは、金子千尋と西勇輝(ともにオリックス)のチームメート2人が12勝を挙げてトップ。それを11勝で則本昂大(楽天)、岸孝之(埼玉西武)が追い、さらに10勝でスタンリッジ、中田賢一(ともに福岡ソフトバンク)と大谷翔平(北海道日本ハム)の3人が付けている。

 ペナントレースは残り1カ月を切った。残り試合を考えても、先発投手の登板は多くて4試合だろう。通常、15勝が最多勝争いのラインと言われるが、今季はセ・パともにこのラインに届くかどうか微妙なところ。15勝未満での最多勝タイトルとなれば、2001年のセ・リーグの藤井秀悟(14勝、当時ヤクルト)以来13年ぶり。下手をすれば、13勝で3人(西武・西口文也、ダイエー・武田一浩、千葉ロッテ・黒木知宏)が並んで最多勝となった1998年のパ・リーグを下回る、史上最低勝利数での最多勝投手誕生となる恐れもある。

けが、不調で成績を伸ばせないエースたち

 セ・リーグを振り返ると、プロ2年目の有力候補が故障に泣いた。まずは菅野智之(巨人)。開幕6連勝で勢い良く飛び出して7月16日には9勝目を挙げたが、8月4日に「右手中指の腱の炎症」で1軍登録を抹消されると、その後は腰痛も発症。ようやく9月4日に2軍で実戦復帰を果たしたばかりで、最多勝争いからは大きく後れを取った。

 同じくプロ2年目の小川泰弘(ヤクルト)も開幕3連勝で2年連続最多勝へ上々のスタートを切ったが、4月18日の阪神戦で右手のひらに打球を受けて骨折。7月の復帰後は順調に白星を重ねて8勝まで白星を伸ばしているが、菅野同様に残り試合から考えると最多勝のタイトル獲得は絶望的な状況だ。

 不振にあえいだエースたちも多い。その筆頭が、11年、12年の最多勝左腕・内海哲也(巨人)だ。開幕9試合勝ち星なしで前半戦を終えてわずか1勝。8月以降にようやく復調したが、いまだ4勝で最多勝には程遠い。また、中日の新エースとして期待された大野雄大も、開幕5試合で0勝3敗。その後、一旦は持ち直したが、8月に再び5試合で0勝3敗と白星を伸ばせず、最多勝争いに顔を出すことはできていない。

 さらに、本命候補だった前田健太(広島)もさえない。10年に沢村賞を受賞した絶対的エースだが、今季は好不調の波が激しく、チーム躍進の陰でここまで10勝こそマークしているが、8敗を喫するなど、思うように白星を伸ばせていない。そして虎党の期待を背負う左腕エース、能見篤史(阪神)も、6月から7月にかけて6連敗が続いて8日現在、7勝(12敗)にとどまっている。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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