大宮が手に入れた家長というエースカード チームに求められる手札のバリエーション

平野貴也

加入直後から放つ圧倒的な存在感

加入直後からまばゆい光を放つ家長。圧倒的な技巧で存在感を放つ 【写真:アフロ】

「41」がエースカードだ。かつて「天才」と呼ばれたレフティーが、オレンジのユニフォームを身にまとい輝きを放っている。今季、大宮アルディージャに加入したMF家長昭博である。昨季はスペイン2部のマジョルカに在籍していたが、出場機会を求めて移籍を決断。1月に完全移籍で大宮に加入し「大宮というクラブが注目されるようにチームで一緒に頑張らないといけないという使命感がある。僕が成長できるチャレンジ。ゼロからスタートをしないといけない」と新天地での再出発にかける意気込みを話したが、その存在感は、キャンプ前から際立っていた。

 チーム始動から間もなく、今季初の「対外試合」となったユース(高校生)との練習試合で、家長は圧倒的な技巧を見せた。右のハイサイドから細かいタッチのドリブルで守備網をすり抜け、個人技でゴールを奪取。練習場に訪れたサポーターをいきなり魅了した。相手が高校生なら当たり前、と思われたフシもあったが、存在感は増すばかりだった。相手を背負っても軽々とボールをキープするため、自然と仲間からのパスは増えた。2月の宮崎キャンプでは、すでに絶対的なゲームメーカーとなり、中盤でパスをさばいて攻撃を組み立て、相手ゴール前では鋭いドリブルからシュートチャンスを生み出した。特に、守勢に回った試合では、家長のドリブルによるカウンター攻撃が威力を発揮する。シュートまで持ち込めれば理想的だが、相手に追いつかれてもすぐに切り返してかわせるため、ゴールに向かわなくとも味方の押し上げを待つ時間を作れている。監督やチームメートにその気はなくても、傍目からは「攻撃戦術=家長」の様相は強まっていった。

チームメートも舌を巻く攻撃センス

 Jリーグが開幕してからも、家長の存在感は強まっている。チームは連敗スタートだったが、3月15日に行われた第3節の川崎フロンターレ戦で初勝利(4−3)。その試合で家長は美しいゴールを生み出した。バイタルエリアの右でパスを受けると、相手選手2人のマークを受けそうになったが、パッとボールをはたいて、2人の間をフリーランで通過。リターンパスを受けると、今度は別の2人とカバーに入ったもう1人の3人をドリブルで突破して冷静なシュートを流し込んだ。相手を手玉に取った、鮮やかなゴールだった。

 2005年のワールドユース(現U−20ワールドカップ)でもチームメートだったDF中村北斗は「アキは、常にボールが自分の間合いにある。若いとき、自分も対人には自信を持っていたけど、半分は抜かれた。体をぶつけても背負ってもブレない。昔から落ち着いたプレーをしているし、緩急が一番上手いと思う。川崎戦だって、そんなにフェイントをかけたわけでもないのに、あれで3人抜くからすごい」と変わらぬ攻撃センスに舌を巻いた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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