なでしこが新戦力発掘に時間を割いた理由=光るプレーも今年の「該当者はなし」
W杯出場チーム増加による影響
3か月ぶりに復帰した澤(写真)は宮間とボランチを組み、攻守に存在感を発揮した 【Getty Images】
今季のなでしこジャパンを振り返ってみると、新たな攻守の形を模索しつつ、新戦力の発掘に注力した一年だった。本来ならば、2015年のカナダワールドカップ(W杯)、16年のリオ五輪に向けて、積み上げや新戦術への取り組みに集中したかったはずだ。しかし、なぜ新戦力オーディションを繰り返さなければならなかったのか――。まずは、その理由を再確認したい。
一つの理由として、2年後に迫ったカナダW杯の出場チーム数が増えることにある。出場チームはこれまでの16チームから24チームとなり、試合数も32試合から52試合に増える。つまり、なでしこジャパンが連覇を達成するためには、7試合を勝ち抜かなければならないのだ。前回大会から単純に1試合増えるだけ……。そんな単純なことではない。
11年のドイツW杯では運良くけが人を出すことなく、ぼぼスタメンを固定したまま戦うことができた。代わったといっても、準決勝と決勝では川澄がスタメン起用され、大儀見(旧姓・永里)が途中出場に回ったぐらいのものだった。
しかし、15年6月6日から7月5日の約1カ月間で7試合を戦うとなれば、主力組を休ませるゲームも必要だ。考えたくはないが、アクシデントもあるかもしれない。24チームに増えたことで、グループリーグ内での実力差が広がることも予想される。そこで、登録メンバーの21人のうち、どの選手がピッチに立つ11人に選ばれたとしても、力が落ちることのないようなチーム作りが必要になるのだ。
大量招集の意図は“なでしこジャパンが目指す戦い方”の共有
単純な世代交代をするのではない。再び世界一になるために、“なでしこジャパンが目指す戦い方”を、日本女子サッカーのトッププレーヤーが共有していかなければならない。なでしこジャパン候補の第二集団も含めて、もう一段高いレベルに到達するためにである。そこで、今回の合宿では、なでしこリーグすべてのチームとチャレンジリーグ(2部リーグに相当)の3チームからのメンバーを招集した理由もそこにある。
「機を見て縦に速い攻撃」を体現した第一戦
そして、36分の先制点の起点となったのはフル代表初選出にしてスタメン出場を勝ち取った、17歳のセンターバック三宅史織だった。三宅が最終ラインから素早く縦パスを入れると、高瀬愛実、宮間とつなぎ、最後は大儀見がゴール。6月の欧州遠征から続けている「機を見て縦に速い攻撃」を体現した。
53分には左サイドから丸山桂里奈がドリブルで仕掛けて角度のないところからシュートを放ち、GKがはじいたこぼれ球を川澄が冷静にゴールへ押し込んで、勝負を決めた。この試合では、澤のシュートを演出するなどした、左サイドハーフの中島依美もその存在をアピール。自ら仕掛けたり、ミドルシュートを放ったりと積極的なプレーが光った。相手と交錯し、86分に無念の交代となったが、「なでしこに定着して世界で通用する選手になりたい」と試合後は意欲的な表情をみせた。