3連覇逃し、変化が求められるなでしこ=トライ&エラーの先に見えたものとは

砂坂美紀

結果が第一ではない今大会

3連覇を逃したなでしこ。しかし、今大会は優勝が最大目標ではなく、トライ&エラーを繰り返すことで成長し、課題を見つけることが重要だった 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は東アジアカップを準優勝で終えた。3連覇を目指して臨んだが、最終戦の韓国に敗れ、1勝1分け1敗。ファンはなでしこに優勝を期待し、なでしこたちはその願いをかなえようと戦ったが、それは達成できなかった。だが、東アジアカップは優勝が最大の目標の大会だったのか。ワールドカップ(W杯)や五輪などの世界大会、またはその出場権を争う予選に比べれば、東アジアカップは結果が第一の大会ではない。

 開幕前日にキャプテンの宮間あやは、今大会で積み上げたいこととして、「きちんとステップアップしていると感じられるくらい、チャレンジと必要な失敗を繰り返していくこと」と語っていた。優勝を目標に掲げながらも、“トライ&エラー”を繰り返さなければ、成長できず、改善点も見つからない。今は、2年後に迫った2015年女子W杯カナダ大会で再び頂点に立つための、大切なステップアップの時期である。

 東アジアカップでは、何に取り組み、何ができて、できなかったのか。その点にフォーカスしながら、試合を振り返ってみたい。

中国戦で実践できた新たな得点パターン

 まずは今大会、なでしこは11年ドイツW杯や昨年のロンドン五輪で見せたサッカーをベースにしつつ、6月のキリンチャレンジカップでのニュージーランド戦と、欧州遠征のイングランド戦とドイツ戦で取り組んできた、“縦に速いサッカー”を機を見て織り交ぜることを目指していた。

 安藤梢は大会前に「自分たちはポゼッションをもう一度しっかりやろうと話している。チャンスがあったら速い攻撃を仕掛ける。ただ、仕掛けるだけだったら、ボールを失うことも多くなる。そこで、いつ仕掛けるかが大事になる」と、これから取り組むべきことをわかりやすく話してくれた。

“攻守にアクションする”という、なでしこサッカーのベースはそのままに、攻守にわたってのリズムに緩急をつけ、攻撃のバリエーションを増やしていく。引き出しを増やす作業を行っていくことこそが、重要なのである。それがアジアのチームとの真剣勝負の中で実践できれば、これ以上ないトライになるだろう。

 大会初戦の中国戦は、現状のベストメンバーと言える布陣だった。しかし、引いて守備を固めする相手に対して、立ち上がりは手を焼いた。徐々にペースを奪うと、36分には安藤が、58分には中島依美がゴールを決めた。いずれも宮間からのパスを受けた大儀見優季のアシストによるものだった。
 宮間がパスを出して大儀見が決めるパターンはこれまでやってきたものだ。そこから、大儀見が受け手になって、2列目の選手を使って得点するパターンは6月以降に取り組んだ成果が表れたものと言っていい。

 2−0で試合を終え、結果を出すことはできたが、相手のプレッシャーが厳しい状況でどれだけ中国戦と同様の形を出せるのかは、まだ未知数だ。中国は若い選手も多く、後半は体力の消耗が激しかった。ドイツや米国など強豪国にもこの形が通用するようになるまでには、まだ時間が必要だと感じられた。

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著者プロフィール

1975年生まれ。福岡県出身。高校時代は女子サッカークラブ「大分ミラクルレディース」でプレー。97年、大学在学中よりフリーライターに。国内外の女子サッカーを約15年取材し続けている。著書『なでしこ つなぐ絆 夢を追い続けた女子サッカー30年の軌跡』(集英社)。共著書『なでしこゴール! 女子のためのサッカーの本』(講談社・日本サッカー協会推薦図書、全国学校図書館協議会選定図書)。『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(佐々木則夫著・講談社)編集協力

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