3連覇逃し、変化が求められるなでしこ=トライ&エラーの先に見えたものとは

砂坂美紀

現状のメンバーでいかに勝てるかが重要

不在により、あらためて澤の存在の大きさを思い知らされたなでしこ。しかし、現状のメンバーで勝てなくては成長はない 【Getty Images】

 続く第2戦の北朝鮮戦は、相手のFWが遠目からでもシュートを打ってきたり、カウンターを狙われることを警戒したのか、思うように攻撃を組み立てられない。前半に放ったシュートもわずか1本にとどまった。ここまでボランチを縦関係にして、ボールを奪ったら、すぐに前線へ配球するという試みをしていたが、ハーフタイムに修正を施す。後半からはボランチをフラットにして、FW大野忍を1.5列目の役割にするロンドン五輪までと同じ仕様に戻したのだ。すると、ミドルシュートや速い攻撃の形を作ることができた。試合での修正力は、なでしこがこれまでに培ってきたものである。

 数多くの決定機を作りながらも、スコアレスドローに終わったことは残念だった。90分間を通して守備ブロックを作ってくる相手への仕掛けはできるようになったが、相手を崩して得点を奪うところまで至らなかった点は課題として残った。

 そして迎えた、勝てば優勝という大一番になった最終戦の韓国戦。なでしこがリズムをつかみかけたが、前半14分、チ・ソヨンにFKを直接決められてしまう。なでしこは勝って優勝しなければならない重圧からか、攻撃の形は作り出すものの、ゴールを奪えない展開が続く。宮間と大儀見がワンツーで崩したり、安藤もサイドからタイミングよく中へ入って効果的な動きを見せた。これまでにない攻撃の形が見られたことは、評価すべきところであろう。
 
 しかし、前掛かりになったところを突かれ、67分、チ・ソヨンに追加点を奪われてしまう。73分に大儀見のゴールで1点を返したが、1−2で敗戦。韓国に5年ぶりの日本戦での白星を献上するだけでなく、優勝も逃してしまった。

 澤穂希や近賀ゆかり、鮫島彩らロンドン五輪の主力をけがで欠いたこと、それを埋めるだけの新戦力が育っていないことが優勝を逃した原因だと見る向きもある。しかし、それはないものねだりである。現在のメンバーでいかに戦うか、それができなけばいつまでもなでしこジャパンは変わらぬままである。

未来を左右するアジアカップまでの過ごし方

 全3試合を終えて、大儀見は「トライした中での結果だし、未来につなげるためにもネガティブにとらえても仕方がない。課題をどう直し、つなげるか。この結果をすぐに受け入れないといけないし、一人ひとりがここから這(は)い上がらないといけない」と語っている。そう、下を向いている暇はないのだ。

 15年女子W杯カナダ大会の予選(AFC女子アジアカップ)が10カ月後に迫っている。ちなみに、14年5月14日から25日までベトナムで開催される同大会では8チームが出場し、5チームがW杯出場権を得られる。出場国は、日本、中国、韓国、オーストラリア、ヨルダン、タイ、ベトナム、ミャンマー。なお、ドイツW杯でドーピング規定に違反した北朝鮮は、予選のアジアカップを含め、W杯出場権を取り消されている。

 佐々木監督は「来年のアジアカップに向けて、代表に集まった際にプレーの質を上げるために、各自がチームで努力をしなければならない」と、厳しい表情で語った。
 東アジアカップで3連覇を狙っていながら、かなわなかった悔しさはあるだろう。一度世界の頂点に立ったからこその重圧もあるだろう。しかし、“トライ&エラー”を繰り返してこそ成長できると信じて臨んだ大会だ。それぞれが所属チームに帰ったときに、何が必要かを考え、向上するためのトレーニングを積んでいけばいい。

 なでしこジャパンの直近の試合は、9月にあるナイジェリアとの国際親善試合だ。22日に長崎、26日にフクアリで戦う。欧州組はシーズンが始まっているため、実質国内組のみでの戦いとなる。また、9月以降の年内の代表活動は今のところ決まっていない。ということは、来年のアルガルベカップまでは、ベストメンバーでの代表活動ができず、5月のアジアカップを迎えることになる。

 アジアカップまであと10カ月。それぞれの選手の日々の過ごし方によって、なでしこの未来は変わるだろう。引き出しは多くなった。あとは、その引き出しを整理しながら、成長していくのみだ。

<了>

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著者プロフィール

1975年生まれ。福岡県出身。高校時代は女子サッカークラブ「大分ミラクルレディース」でプレー。97年、大学在学中よりフリーライターに。国内外の女子サッカーを約15年取材し続けている。著書『なでしこ つなぐ絆 夢を追い続けた女子サッカー30年の軌跡』(集英社)。共著書『なでしこゴール! 女子のためのサッカーの本』(講談社・日本サッカー協会推薦図書、全国学校図書館協議会選定図書)。『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(佐々木則夫著・講談社)編集協力

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