イチロー移籍に揺れたシアトル 戸惑いを隠せなかった川崎

木本大志

唐突なトレードに戸惑いを隠せなかった川崎。発表当日は取材を拒否した 【写真は共同】

 7月23日(日本時間24日)の午後3時過ぎ、マリナーズからメールが送られてきてイチロ−のトレードがオフィシャルとなった瞬間、川崎宗則は、外野の芝の上で練習をしていた。

「川崎は知っているのだろうか?」――記者席から彼の姿を見ながら、そんなことを考えていた。すぐにクラブハウスに降りていくと、岩隈久志がびっくりしたような表情でテレビ画面を見つめている。ついさっき、移籍を知らせるニュースが流れていたそうで、言葉をなくしていた。

 少し離れた川崎のロッカーにはまだ本人の姿はなく、川崎の隣のイチローのロッカーには、トレーニングウエアなどが掛かったままだった。本当はまさにそのとき、イチロ−が川崎の携帯に電話をしていたようだ……。

唐突なトレード、誰もが整理がつかなかった

 トレードの翌日、どういう形でトレードを知ったのかと聞かれて、川崎が言った。
「僕は練習してて、イチロ−さんから電話がきてたんですけど、電話に出られなくて。こっちに帰ってきて、みんなが教えてくれました」
 川崎の取材が翌日になったのは、トレード当日の取材を彼が断ったからだ。

 三塁側のダグアウト前がイチロ−の出待ちでごった返すころ、川崎が打撃練習を終えて引き上げようとしていた。そこで「少し、時間もらえますか?」と声を掛けると、「時間、ない」とだけ言ってクラブハウスに消えている。試合後も、広報を通じて、「コメントはない」としか対応しなかった。
 ショックというより、整理がつかなかったのだと思う。それは取材する側にとっても同じことだったからだ。

 これほど唐突なトレードはなかなかない。知る限り、オールスターの翌日、チームは再契約のオファーをまとめ始めていた。そんなときにイチロ−側から、トレードのリクエストがあったのだ。
 当日はマリナーズとヤンキースのクラブハウスを何度も往復し、午後4時からは会見が始まり、それが終わると日本からの電話の対応に追われ、トレードを頭の中で整理して考える時間などなかった。ただただ、やらなければいけないことをこなしていくだけだった。

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