イチロー移籍に揺れたシアトル 戸惑いを隠せなかった川崎
会見での衝撃的な発言「僕がいるべきではない」
記者会見での衝撃的な発言が、イチローの苦悩を物語っている 【写真は共同】
「オールスターブレークの間に自分なりに考え、出した結論は、20代前半の選手が多いこのチームの未来に来年以降、僕がいるべきではないのではないか、ということでした」
僕がいるべきではない……。まさか、という言葉である。確かに、地元紙などでは、「チームはイチローと契約延長すべきではない。彼のために若手がチャンスを得られない」――といった声はあったが、現実的には、イチローを追いやるほどの若手はいなかったし、候補といわれたキャスパー・ウェルズやカルロス・ペグエロにしても、底が見えている感があった。ある意味、残念ながらイチロ−を脅かすような選手はいなかったのである。
しかし、イチロ−は、自ら身を引いた。同時に口にした「僕自身も環境を変えて、刺激を求めたいという強い思いが芽生えてきました」という言葉は、彼のマリナーズでのキャリアを象徴する。
2003年までは地区優勝を争ったが、それ以降は再建の繰り返し。今季も、開幕して1カ月もすると先が見えてしまった。それでも、期待されたダスティン・アックリー、ジャスティン・スモークらの成長を感じられれば、来季以降への期待が持てたかもしれない。しかし彼らの低迷は、数年後にはプレーオフ争いができる、という将来への期待もかすんでいった。
あえて安住を手放し、38歳で決断した再挑戦
「前向きな要素、前向きな挑戦が必要だし、それにトライしてみたいという思いが芽生えた。いろんなことを考える中でネガティブなことも考えた。(ヤンキースの移籍に対して)ノーというと、ネガティブな挑戦がそこに待っている。ただ、イエスと言えば、すごく前向きな挑戦が待っている、という2つの道があったんですけど、そのどっちを取るかっていうのはね、そこにそんな迷いはないでしょう」
ヤンキースには例えば、デレク・ジーターら刺激を与えてくれるチームメートもいる。このコメントからは、彼から学びたいという思いも透けていた。
「長い間、安定した結果を出している人間、そして一番勝つことを命じられているチームの中で、ああいった存在で居続けられることっていうのは、これは僕の想像ですけど、ポテンシャルだけでは成立しない。やはりそこに確かな人間性が存在している、というふうに僕は想像しています」