出岐の2区激走、神野は5区で常識覆す “黄金時代”青学を築き上げた選手たち

スポーツナビ
 新春1月2日、3日に開催される第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で、優勝候補に推されている青山学院大。10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝と勝利を飾り、大東文化大(1991年)、順天堂大(2001年)、早稲田大(11年)に続く史上4校目の大学駅伝三冠を目指す。

 現在、圧倒的な層の厚さと強さを見せている青山学院大だが、箱根初制覇は“新・山の神”神野大地らを擁した第91回大会(15年)。今年の第92回大会では1区から先頭を奪って完全優勝を果たしたが、この強さの礎を築いてきた歴史を振り返る。

2008年、関東学連選抜のアンカーとして箱根路を走った横田竜一 【写真:アフロスポーツ】

 今回で9年連続22回目の出場となるが、09年に行われた第85回大会までは本戦出場も難しく、予選会の壁を越えられずにいた。第84回大会には横田竜一、先崎祐也の2人が関東学連選抜に選ばれ、10区を任された横田が総合4位でゴールテープを切っている(先崎は補欠)。この時、学連の監督を務めていたのが原晋監督。ここから、原監督と箱根の歴史がスタートを切った。

 33年ぶりの本戦出場となった第85回大会では、予選会で荒井輔、先崎ら5人が100位以内に入って総合13位。記念大会で13枠あった本戦への切符をギリギリで獲得した。久しぶりの箱根路では23校中22位(城西大が棄権)という惨敗に終わったが、ここから巻き返しの歴史が始まる。

 第86回大会の予選会では、荒井が1時間を切る好タイムで11位に入るなど、総合8位で本戦へ。そして、本戦では1年生だった出岐雄大が1区9位でたすきを渡すと、2区の米沢類が区間5位の走りで5位に上がり、そこから最後まで粘って、総合8位でシード権を手に入れた。

出岐が“花の2区”区間賞獲得で過去最高5位に

第88回大会で2区区間賞を獲得した出岐雄大(左)と、たすきを受け取った福田雄大 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 シード権を獲得してからは、安定した力を見せるようになる。第87回大会では、往路16位という結果に終わったが、復路で挽回し9位に入って2年連続のシード権獲得。翌88回大会では3年生エースだった出岐雄大が“花の2区”区間賞の活躍でシード圏内を最後までキープし、過去最高の5位という結果に終わった。

エース出岐の故障で苦戦した青山学院大だが、高橋宗司(左)が区間賞の快走でチームを救った。右は9区の横山拓也 【写真:アフロスポーツ】

 その翌シーズン、2012年10月の出雲駅伝で青山学院大としては初となる大学駅伝優勝を飾り、一躍優勝候補に名を連ねる。しかし箱根本戦では、エース出岐がふくらはぎのけがで10区に回る苦しいオーダーに。それでも、8区で高橋宗司が区間賞を獲得し、8位に入ってなんとかシード権を保持した。

 第90回大会では、高校駅伝優勝の経験を持つ現エース・一色恭志がゴールデンルーキーとして1区を走り区間6位。続く2区には2年生の神野大地がその順位を1つ上げて上位をキープするが、前年区間賞を獲得した高橋が“山上りの5区”で区間11位と上がりきれず。しかし7区で2年生だった小椋裕介が区間2位、3年生の藤川拓也が9区区間3位で再び総合5位に入り、“黄金時代”の土台が整った。

神野の活躍で初優勝 16区間先頭を走り続ける

 そして第91回大会、1区から10区まで力のある選手を並べた青山学院大のチームスローガンは「ワクワク大作戦」。見ている人をワクワク、ドキドキ楽しませるレースを標榜(ひょうぼう)すると、1区から優勝争いに絡み、4区で1年生だった田村和希が区間新記録で区間賞を獲得。続く5区の神野が、区間2位のダニエル・キトニー(日本大)に2分30秒の差を付ける1時間16分15秒という常識を覆すような記録で山上りを走破し、往路優勝を飾る。

 往路で奪った大きなアドバンテージを生かすと、7区の小椋、8区の高橋、9区の藤川も区間賞を奪う走りを見せ、10区間の総合タイムが10時間49分27秒と史上初めて10時間50分切りを達成し、圧勝での箱根初優勝を飾った。

完全優勝を果たし、ゴールテープを切った渡辺利典(手前)を迎える青山学院大の選手たち 【写真:アフロスポーツ】

 2016年の箱根駅伝では、原監督が「最強メンバー」と称す磐石の布陣で大会に臨むと、1区からトップを譲ることなく完全優勝。この結果、前年の5区で神野が先頭を奪ってから16区間ずっと先頭を走り続けている。

 今大会では大学駅伝三冠、箱根駅伝3連覇を狙う青山学院大。先頭を走り続ける同校の黄金時代はまだまだ継続していく。
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