王者・青山学院大に漂う3連覇への自信 不安要素は「山の神」と「東海大」

スポーツナビ

新たな区間配置は明言せず

3連覇、3冠を意識してポーズを取る青山学院大のエントリー選手たち 【スポーツナビ】

 第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(2017年1月2日、3日)で3連覇、そして今年度の大学駅伝3冠を狙う青山学院大が17日、神奈川・相模原市内の同大キャンパスで会見を行った。すでに明言されている2区のエース一色恭志(4年)以外の区間配置は明かされず。原晋監督は「(チーム構成を)前半型にするか後半追い上げ型にするか、(厚い選手層の中から)うれしく悩んでいる」と、笑みを浮かべながら話した。

 今大会も優勝候補筆頭に挙げられている青山学院大は、エントリー選手上位10人の1万メートル平均タイムを見ても、2位を15秒近く離してトップ。「自分たちの普段通りの堂々とした走りができれば自然と優勝できると思う」と主将・安藤悠哉(4年)が語れば、原監督も「(ライバルは)他大学というより我々自身。インフルエンザなどの病気、直前の故障・ケガが無ければ、自ずと結果は付いてくるのかな」と自信をのぞかせた。

番狂わせが起こるなら山登りか

原晋監督が「怖い」と挙げたのは、1年生の活躍で躍進が期待される東海大 【スポーツナビ】

 その原監督が「唯一の不安」と語ったのが5区山登りだ。コース変更により今大会から距離が短縮(23.2キロ→20.8キロ)されたものの、タイム差が開きやすい区間特性は変わらない。昨年までの青山学院大は2年連続で”山の神”こと神野大地が快走し強さの一翼を担ってきたが、その神野が卒業。後継者は貞永隆佑(3年)、梶谷瑠哉(2年)、茂木亮太(4年)の中から選ばれる可能性が高い。

 その3人にしても託される役割は神野と大きく異なる。「今年の青山には“神”はいません。区間5番手以内、区間賞から1分前後でつないでくれれば十分」と原監督。5区を希望した貞永も「神野さんを超えることはできないと思っているので、頭から切り離して、自分は自分の走りをしてチームに貢献したい」と割り切ってレースに臨む構えでいる。

 しかし他チームから“山の神”が誕生し記録的な走りを見せれば、青山学院大の優勢が一気に揺らぐ可能性もある。原監督もその危険性を認識しているものの、「『神さま隠れておいて』という感じ(笑)。“山の神”が出てくるとどうしようもない、それが箱根駅伝なんです」と、さすがの王者も対抗策は無いようだ。

怖いのは「東海大学」

 そして“山の神”候補として原監督が挙げたのが、東海大学の1年生たち。「1年生は夏合宿の疲れがちょうど抜けてくるのが12月頃で、一気に力が付いて120パーセント成長する子もいる。そういう意味で東海大学さんは怖いですよね。(5区では)1年生の上りが良いと聞いているので、果たしてどこまで良いのか。良い方向に転がると大爆走する可能性を秘めていると思います」。

 出雲駅伝で5区途中まで首位を走った東海大は、出場全チーム最多の1年生8人をエントリーし、往路に4人を起用するとも言われている。關颯人、鬼塚翔太、館澤亨次らスーパールーキーを中心とした東海大が青山学院大をどこまで慌てさせるのか、注目が集まる。

走力だけではない青学の強さ

安定感が光るエース一色恭志。3年生になってから区間3位以上を逃したことはない 【スポーツナビ】

 そう言いながら原監督がどこか余裕を漂わせている背景には、盤石の選手層のほかに、エース一色が持つ安定感があるだろう。エースと呼ばれるようになった3年生以降、三大駅伝ではすべて区間3位以上をキープしてきた。今年の2区では山梨学院大の留学生ドミニク・ニャイロとの区間賞争いが予想されるが、気負いは無い。

「区間賞というより、66分台を出したい。ニャイロ選手がそれより上だったら、それは『すごい』ってもう拍手します(笑)。タイムとしては負けてもレースとしては負けたくないです」

 個人で無理をすることなく、あくまでチームとしてレースの勝利を狙う。そんなエースの安定感は背中を見てきた後輩たちにも良い影響を与えている。次期エース候補の1人である田村和希(3年)は、一色を「早いよりも強いランナー」と評す。

「(強さの秘訣は)やっぱり集中力ですかね。一色さんの顔つきとか見ていても、レース前はかなり集中していて、獲物を追うような目になってしまうので(笑)。そこがカッコいいんですけど」

 田村は会見で唯一希望区間を述べず「『どこでもこい』です」と語った。個人個人の走力だけでなく、チームとしてのまとまりも感じさせる青山学院大のランナーたち。3連覇、3冠の達成へ視界は良好だ。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)
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