MLB最年長右腕バートロ・コローン “ビッグ・セクシー”と愛される理由
MLB最年長の43歳ながら、メッツで先発ローテーションを守るコロン 【Getty Images】
しかし、この愛称の持ち主は、文字通りコロコロの体型、年輪を感じさせるいかつい顔の大ベテランピッチャー。43歳の球界最年長投手、バートロ・コローンのプレーをしばらく見ていると、実際にセクシーに思えてくるから不思議なものである。
「僕がフィールドで楽しんでいる姿を見て、ファンも同じように楽しんでくれるのは分かっている。打席でスイングしたら、ヘルメットが外れたりとか、喜んでもらえるのは良いものさ。だからいろいろ考えているんだ」
サンディエゴで開催されたオールスター期間中、メッツから選出されたコローンは悪戯っぽい笑顔を浮かべてそう語っていた。
誰もが表情を緩ませる存在
「バートロが43歳にしてここにいることに驚いてはいないよ。練習熱心で、投げるのが大好き。笑顔を浮かべてスタジアムに現れ、常に準備ができている。最高の男だ。42歳のイチローもコローンと同じように体を気遣っている選手だね。2人ともベースボールをリスペクトし、愛していて、ハードワーカーでもある」
アスレチックス時代にコローンのチームメートだったスティーブン・ボート捕手は、二人の球界最高齢選手をそう評してくれた。
コローンの話をするとき、どんな選手でも表情を緩ませるのも特徴の1つだ。身長180センチ、体重129キロという太っちょの身体でフィールドを悠々と歩き、笑顔を浮かべて楽しそうにプレーする。本人の言葉通り、打席ではヘルメットを跳ね飛ばしながらスイングする姿は実にユーモラス。そうかと思えば、5月7日(現地時間)のパドレス戦でまさかのホームランを放ち、42歳11カ月という史上最年長でメジャー初本塁打を記録した選手になった。その瞬間、ソーシャルメディアがコローン一色になったのは記憶に新しい。
現在のメジャーリーグにおいて、コローンは球界全体のマスコット的な存在。ホーム、アウェーと問わず、ファンから絶えず歓声を浴びる大変な人気者なのである。
過去には禁止薬物で出場停止も
エンゼルス時代の2005年には自己最多の21勝(8敗)を挙げてサイ・ヤング賞を獲得したが、06〜11年の6年間はケガと不振で10勝未満。12年には10勝を挙げるも、シーズン中にテストステロンの陽性反応で50試合の出場停止処分を受けた。その翌年には禁止薬物の購入が発覚するなど、この時点でのイメージはとても良いとは言えなかった。
その流れをたどれば、すでに“終わった投手”が薬の力に頼った典型的な例に思えてくる。にも関わらず、その後に評価を回復し、莫大な人気まで集めるようになった理由はどこにあるのか。
「今の僕はもう周囲に何を言われてもまったく気にならない。ただ毎日をさまざまな形で楽しんでいる。自分にとって最後の日がいつ訪れるかはわからないからね」
現在は大都市のニューヨークでプレーするコローンだが、そんなコメント通り、周囲の騒ぎはどこ吹く風。ヤンキースのアレックス・ロドリゲスのように、過去の失敗に延々と言い訳することもない。これほど潔く、ユーモラスな選手に対し、いつまでも悪いイメージを持ち続けるのは誰にとっても難しいのかもしれない。