12球団唯一の全試合フルイニング出場。2024年の小郷裕哉を、指標と映像で振り返る
東北楽天ゴールデンイーグルス・小郷裕哉選手 【写真:球団提供】
東北楽天の選手による全試合フルイニング出場は、20年の歴史で初めてだった
今回は、セイバーメトリクスの分野で用いられる指標をもとにした、小郷選手の特徴と強みを紹介。それに加えて、球団初となる交流戦優勝に大きく貢献した2本の「起死回生の一打」を映像とともに振り返ることによって、一切の休みなくシーズンを駆け抜けた小郷選手の貢献度の高さについてあらためて考えていきたい。
2023年シーズンは積極打法で結果を残したが、2024年シーズンは選球眼を再び向上させている
小郷裕哉選手 年度別指標 【©PLM】
さらに、四球を三振で割って求める、選球眼を示す指標の一つである「BB/K」に関しても、2024年に規定打席到達者のなかでリーグ5位となる.567という数字を記録した。フルイニング出場を重ねる中でトップバッターを任される機会が多かったことを考えても、選球眼に優れている点は大きな強みといえる。
ただし、2023年には、IsoDが.059、BB/Kが.424と、いずれもキャリア平均を下回る数字となっていた。前年に従来よりも積極的な打撃スタイルを取り入れてブレイクを果たしたものの、2024年シーズンは再び選球眼を活かしたバッティングに回帰。それでも2年続けて結果を残してみせた点に、小郷選手の打者としての引き出しの多さが示されている。
長打に関する指標に目を向けると、キャリア通算の長打率に関しては.375とまずまずの水準にある。その一方で、長打率から単打の影響を取り除いた、いわば“真の長打率”とも考えられている「ISO」に関しては、キャリア通算で.122とやや低い数字となっている。
2023年に規定打席未到達ながら2桁本塁打を記録した事実が示す通り、小郷選手は一発長打の魅力を秘めた選手でもある。さらに、2024年にはリーグ4位となる6本の三塁打を放っており、一つ先の塁を狙えるだけの脚力も備えている。これらの特性を活かして、2025シーズンはより多くの塁打を積み重ねる打者へと進化を遂げる可能性も大いにあるはずだ。
盗塁とBABIPという2つの分野で、脚力が従来以上に発揮されるようになった
脚力に関して着目すべきもう一つの指標として、塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す「BABIP」が存在する。BABIPは一般的に運に左右される要素が大きいと考えられており、基準値は.300が基準値であるとされている。
ただし、内野安打が多くなる傾向にある俊足の左打者が高い数値を記録しやすい点もBABIPが持つ特徴の一つだ。この条件に合致する小郷選手にとっても有利になり得る指標ではあるものの、2019年のBABIPは.235、2021年は同.231、2022年は同.154と、意外にもキャリア初期は基準値を大きく下回る年が大半となっていた。
しかし、2023年には基準値を上回る.306というBABIPを記録し、2024年は.312とさらに数字が向上している。BABIPは長いスパンで見ると一定の値に収束しやすい性質を持つとされているだけに、直近2年間においてはこれまで運に恵まれなかったぶんの揺り戻しが発生し、俊足の左打者という特性がより打撃成績に直結し始めたという考え方もできそうだ。
2024年の小郷選手は指標面の進化に加えて、ファンの記憶に強く残る印象的なシーンを多く生み出したという点も特筆に値する。ここからは、球団初の交流戦優勝を大きく手繰り寄せた、小郷選手が放った2本の「起死回生の一打」を振り返っていきたい。
甲子園球場で9回2死から起死回生の逆転2ラン(2024年6月5日・阪神戦)
本拠地に歓喜をもたらす、値千金の逆転サヨナラタイムリー(2024年6月11日・巨人戦)
2025年シーズンもフル稼働を続けながら、チームの主軸に相応しい活躍を見せられるか
投高打低の傾向が強まる中でチームの主軸に相応しい成績を残した小郷選手が、全試合でフルイニング出場を果たしているという事実は、その貢献度の高さを雄弁に物語るものとなっている。三木肇監督が前回指揮を執った2020年に小郷選手はOPS.843と好成績を残していただけに、2025年シーズンも押しも押されもせぬ主軸としての活躍が大いに期待されるところだ。
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