またもチリに敗れたアルゼンチン タイトル獲得のために必要な方向修正

3大会連続で逃したタイトル

メッシ(手前)は試合後、代表からの引退を宣言。一時的な感情によるものかもしれないが…… 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 もはや呪いにでもかかっているのではないかと考えたくもなるが、現実は違う。

 6月3日から26日(現地時間)まで米国で行われたコパ・アメリカ・センテナリオで、アルゼンチン代表は1年前の同大会と同じく、PK戦の末にチリとの決勝に敗れた。2014年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会決勝でドイツに敗れて以降、これでアルゼンチンは3大会連続で決勝でタイトルを取り逃がしたことになる。

 フットボールの歴史をくまなく探し回らないことには、現在のアルゼンチンと同じ境遇のチームを見つけ出すことは難しいだろう。なにせ、世界最高のプレーヤーであるリオネル・メッシを筆頭に、あらゆるチームが欲しがるスター選手を何人も擁する代表チームが3年連続で3度のファイナルを戦い、延長戦も含めて1ゴールも挙げられず、すべての試合で敗れたのである。

 さらには試合が終わった後に、メッシが代表引退を公に明言したことにより、アルビセレステ(「白と空色」の意。アルゼンチン代表の愛称)は新たな危機に直面することになった。あの発言が一時的な感情によるものなのかどうかは分からないが、彼が大きなショックを受けたことは間違いない。

最もパフォーマンスの安定したチームだったが……

アルゼンチンは準決勝で開催国である米国に4−0で快勝を収めるなど、出場国の中で最も安定したチームだった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 大会を振り返ってみれば、アルゼンチンは出場16カ国の中で最もパフォーマンスの安定したチームだった印象がある。だが、グループリーグ初戦でも対戦したチリを除き、対戦相手のレベルが総じて低かったことも事実だ。

 一方のチリは大会が進むにつれて調子を上げていった。グループリーグ初戦でアルゼンチンに1−2で敗れ、続くボリビア戦でも後半アディショナルタイムに得た疑惑のPKにより2−1と辛勝するなど出足は悪かったが、準々決勝では素晴らしいパフォーマンスを発揮し、メキシコに7−0と大勝している。

 この試合で勢いを得たことで、チリは素早くボールを動かしながら複数の選手が相手ゴール前に押し寄せる自分たちのフットボールを迷いなく実行できるようになり、コロンビアとの準決勝では立ち上がりの2ゴールで早々に勝負を決めた。

 アルゼンチンは準決勝で開催国である米国に4−0と快勝したものの、それはパラグアイとの準決勝で6−1と大勝した昨年のコパ・アメリカを彷彿(ほうふつ)とさせた。つまり、その後の決勝で再びチリにPK戦で敗れることを予感させる勝利だったのである。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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