またもチリに敗れたアルゼンチン タイトル獲得のために必要な方向修正
あらためて示したチリの隆盛
しかし、アルゼンチンはこの日も以前と同じシナリオをなぞることになった。前半28分にはマルセロ・ディアスの退場により数的優位を手にし、延長前半にはアレクシス・サンチェスが負傷交代を強いられるなど有利な状況が重なったにもかかわらず、またしてもイグアインがクラウディオ・ブラボを相手に決定機を外し続けたのだ。
対するチリは、いつも通りにプレーしていた。実力が拮抗(きっこう)したチーム同士のファイナルにて、チリはボールポゼッションとできる限り高い位置から仕掛けるプレッシングを全うしていた。それは何年も前にマルセロ・ビエルサが植え付け、ホルヘ・サンパオリの手で洗練され、フアン・アントニオ・ピッツィ現監督に引き継がれたチリのプレースタイルそのものだった。今大会の優勝は、明確なプレー哲学と有能な選手が多数そろった黄金世代を擁するチリの隆盛をあらためて証明するものだった。
プレー内容だけにとどまらない敗因
3大会連続で決勝にて敗れることなど、ただの偶然であるはずがない。そして、その原因はチームのプレー内容だけにとどまらない。
アルゼンチンでは新シーズンの開幕まで2カ月を切った今でも、まだ来季の国内リーグがどのような形で行われるのかさえ決まっていない。派閥闘争が続く中、誰がAFAの会長になるのかも未定な状況だ。運営を代行するFIFAは、代表チームがタイトルを獲得するためには何が足りないのかを真剣に考える必要がある。
問題はメッシやアグエロ、イグアインらにあるわけではない。彼らだけでなく、代表に選ばれる選手たちはみな所属クラブではスター選手として活躍しているのだ。隣国チリがフットボール史上最高に幸福な時を謳歌(おうか)している傍らで、アルゼンチンは今こそ国を上げて内省、熟慮し、長年手付かずのままでいた方向性の誤りを正すべき時を迎えている。
(翻訳:工藤拓)