太平洋側諸国の健闘が光るコパ・アメリカ 背景にある南米フットボール界の”変化”

南米サッカー連盟の体質が一新

コパ・アメリカ・センテナリオの決勝は2大会連続でアルゼンチン対チリの組み合わせとなった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 6月3日(現地時間)に開幕したコパ・アメリカ・センテナリオもいよいよ残すところ3位決定戦と決勝のみ。3位決定戦は開催国である米国とコロンビア、決勝は2大会連続でアルゼンチン対チリの顔合わせとなった。

 南米ではCONMEBOL(南米サッカー連盟)を政治的にコントロールする大国がさまざまな優遇を受けながら、多くの成功を手にしてきた。20世紀を通して、同連盟に所属する小国の多くはそのような批判を繰り返してきた。

 ペルー人のテオフィロ・サリナスからパラグアイ人のニコラス・レオスに会長が代わった1980年代中頃より、CONMEBOLはパラグアイのアスンシオンに本部を構えている。それは同連盟を実質的に支配するアルゼンチンとブラジルが権力のバランスを崩さぬよう、それが望ましい形だと暗黙のうちに合意しているからだと言われている。

 だが、2015年5月に生じた「FIFAゲート」(「ウォーターゲート事件」にちなんで名づけられたサッカー界の汚職事件)の発覚とともに各国協会のトップが辞職を強いられたことで、レオスの後を継いだ同郷のアレハンドロ・ドミンゲスはCONMEBOLの体質を一新せざるをえなくなった。

 CONMEBOLに所属すらしていない米国を開催地に選んだコパ・アメリカ・センテナリオでは、技術的なミスはあっても、疑惑を持たせる判定は見られなくなった。この大会では極めて珍しいことに、太平洋側諸国の健闘が光っているのも偶然のことではない。

スアレスの不在が響いたウルグアイ

ウルグアイはエースであるスアレス不在の影響が大きく、早々と大会から姿を消してしまった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 とはいえ、ウルグアイやブラジル、パラグアイの早期敗退は本当に大きなサプライズだったのだろうか? パラグアイを除く2カ国については、そのポテンシャルから判断すればそう言えるかもしれない。だが、これらのチームのメンバー構成とピッチ上で見せたプレーを見た者からすれば、その結果は驚くべきことではなかった。

 ウルグアイは大会を通してエースのルイス・スアレスを起用できなかった。ジョルジオ・キエッリーニへの噛みつき行為によって大会を追われた2年前のワールドカップ(W杯)ブラジル大会、決勝トーナメント1回戦のコロンビア戦と同様に、けがの回復が間に合わなかったスアレスはグループリーグ敗退が決まったベネズエラ戦でのプレーがかなわず、オスカル・タバレス監督が座るベンチを殴りつけて怒りをあらわにしていた。

 スアレスを欠くウルグアイは、エディンソン・カバーニと2トップを組む人材を最後まで見つけることができなかった。また、中盤には攻撃を組み立てられる選手が不在で、4−4−2のサイドハーフを務めたカルロス・サンチェスとニコラス・ロデイロもボール扱いはうまいが、攻撃に奥行きを与えることはできなかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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