メッシにリーダーの気質はない? 巻き起こる論争にプレーで見せた答え

物議を醸したマラドーナの発言

マラドーナに「リーダーの気質はない」とコメントされたメッシ(写真) 【Getty Images】

 その会話がマイクに拾われていることに気づいての発言だったのかどうかは分からないが、ディエゴ・マラドーナが再び議論をもたらす一言を発した。フランスでペレとともに出席したセレモニーにて、アルゼンチン代表とバルセロナの至宝リオネル・メッシについて「いい奴だけれど、あいつにリーダーの気質はない」とコメントしたのだ。

 2010年のワールドカップ(W杯)でアルゼンチン代表を率いて、数度の試合でメッシにキャプテンマークを託したこともあるマラドーナの発言は世界中を駆けめぐった。その翌日、彼は自らの発言を認めた上で、「あいつはプレーに集中させるべき。リーダーになれとプレッシャーをかけるべきではない」とフォローしていた。

 当のメッシはその数日前、米国で行なわれているコパ・アメリカ・センテナリオの初戦を欠場した。大会直前に行われたホンジュラスとのテストマッチで腰を痛めたからだが、脱税疑惑をかけられている裁判で証言するため、バルセロナへのとんぼ返りを強いられた際の疲労を考慮してのことでもあった。

パナマ戦で見せた異次元のプレー

メッシ(10番)は後半から途中出場したパナマ戦で3ゴールを決め、ライバルのみならず自軍のチームメートとも異次元のレベルにあることをあらためて証明した 【Getty Images】

 そのため第2戦での復帰に注目が集まったのだが、相手は2−1で破った初戦のチリよりはるかに力が劣るパナマであり、無理をする必要はないように思われた。そのためヘラルド・マルティーノ監督は前日会見でメッシの回復が間に合ったことを認めながらも、先発で起用するのか、途中出場にとどめるのかは明言しなかった。

 結局メッシはベンチスタートとなったが、試合は開始早々にニコラス・オタメンディが先制点を獲得。パナマが前に出ざるを得なくなったことでカウンターを仕掛けるスペースが生まれ、ゴールラッシュが期待できる展開となった。

 ところがアルゼンチンは前半途中に相手選手が退場するアドバンテージまで得ながら、なかなか追加点を決めることができなかった。パナマがまるでバスケットボールの試合のようにファウルを連発し、試合を頻繁に途切れさせる作戦に出たからだ。

 そこでマルティーノはソルジャー・フィールド・スタジアムに詰め掛けたファンの期待に応え、残り30分の時点でメッシをピッチに投入。同時に試合は一変した。まず相手ディフェンダーのミスを生かして1点。続いてゴール右隅に直接フリーキックを流し込むと、さらにペナルティーエリア手前でディフェンダーをかわして3点目。全て異なる形から決めた3ゴールにより、メッシはライバルのみならず自軍のチームメートとも異次元のレベルにあることをあらためて証明したのである。

 最後はマルコス・ロホへの絶妙なサイドチェンジによってセルヒオ・アグエロのゴールも演出し、試合は5−0で終了。最終的には苦戦した前半がうそのように思えるほどの圧勝という印象が残ったが、それは全てメッシが可能にしたことだった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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