五郎丸、南ア戦前に「恐怖はあった」 日本代表W杯総括会見、選手コメント

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 ラグビー日本代表は13日、ワールドカップ(W杯)・イングランド大会を終えて帰国し、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(HC)をはじめ、31人の日本代表選手たちが都内で会見に臨んだ。

 会見後の取材に応じた五郎丸歩は、「結果を残さないといけないというプレッシャー」が恐怖心につながっていたと明かした。しかし、重圧を乗り越えて充実した大会を経て、最後は「このチームが最後になるという寂しさの方が強かった」と、万感の思いを口にした。

 以下、取材に応じた五郎丸、主将のリーチマイケル、田中史朗、山田章仁、藤田慶和、福岡堅樹のコメント。

五郎丸歩、日本ラグビーの「可能性は相当ある」

最後は「このチームが最後になるという寂しさの方が強かった」と明かした五郎丸 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――サッカーでは欧州に出て鍛えないと戦えないという風潮がある。日本国内でプレーしている選手で作ったチームが結果を残したことは、後に続く選手にも影響を与えるのではないかと思うが?

 僕は国内だけでやってきましたし、海外に留学もしたこともありません。そういった意味では、日本国内で目の前のことをしっかりやって戦えるということを、実際に出せたと思います。そこはバランスが必要だと思いますね。田中史さんみたいに、スーパーラグビーの先駆者として参戦して感じたことを選手に伝えたり、リーチマイケル主将もそうですし、その辺のバランスは非常に大切になってくると思います。

――大会前に「日本のスポーツを変えたい」と言っていて、実際にその通りの結果になった。日本の可能性を今、どう感じている?

 可能性は相当あると思います。これだけ忠誠心を持って、自分たちの生活の全てを犠牲にできる民族は日本しかいないかなと思いました。(ジョーンズHCが次期監督を務める)南アフリカのストーマーズに行って同じことをやったら、首を切られるでしょう(笑)。

――忠誠心というのは、外国人の選手を見て感じたこと?

 この4年間、とてつもないハードなスケジュールの中でやってきて、それをまず実行できたというのが実際にあって。その分、家族だったりチームにすごく負担はかかったと思いますけれど、それを乗り越えての結果だったと思うので、このチームだけではなくて、サポートしてくれた方にも、感謝の気持ちというのが選手の一人一人から出てきたと思います。

――W杯で相手が怖いと思ったりひるんだことは?

 人に対してはないですが、W杯に対してはありました。やはり自分が小さい頃から(W杯への)憧れが強かったというのがありましたし、その中で結果を残さないといけないというプレッシャーですね。それに対する恐怖というのは南アフリカ(戦)の2日前まではありました。

――そのプレッシャーが解けてからは?

 楽しかったです。(日本には)帰りたかったですけれど、このチームが最後になるという寂しさの方が強かったですかね、最後は。

――楽しいと思えるようになったきっかけは?

 自分でコントロールしたわけではないですね。メンタルコーチの方も来ていただきましたけれど、そこはあえて相談しなかったです。

――それは自分で乗り越えないとダメだと思っていた?

 コーチ陣には、イングランドで主将をした方やフランスで代表をしていた方がいて、その方々と話す時に、「W杯はやはり楽しまないといけない」と表現されて。あまりピンと来なかったんですけれど、すごいプレッシャーがかかった中で、このプレッシャーというのは普段味わうことがないのは間違いないですし、このプレッシャーすらも楽しむというか、感じることによって、何か自分の中で変わっていくものがあるのかと思って、特に相談することもなく耐え抜きました。

――ピッチに立った時は晴れ晴れとした気持ち? 今までのいろいろな試合とは全然違う気持ち?

 責任の大きさが違いますね。W杯は国を背負って戦うというのが。その部分くらいですかね。後は準備してきたことを、しっかりと果たしていくことだと思います。

――今は完全燃焼した、やり切ったという気持ちか?

 やり切った部分もあります。でもやっぱりベスト8に行きたかったという気持ちも強いです。

――今までジョーンズHCと歩んできた日々をもう一度やれと言われたら?

 無理です(笑)。

――日本が結果を出せば、ルーティンのポーズがまねされるかもとは思っていた?

 本当はイングランド人の方がまねしてくれると思っていたんですけれどね。(元イングランド代表のジョニー・)ウィルキンソンがやっていたので。そうしたら「何だあのポーズは」って(笑)。

リーチマイケル「みんなが忠誠心を持っている」

レフェリーと英語でコミュニケーションが取れたことが勝利につながったと語ったリーチマイケル 【スポーツナビ】

――会場でもたくさん、日本チームへの応援があったが?

 それはすごくうれしかったです。どんな試合でも日本のファンがいて。

――7人制ラグビー(セブンズ)の予選スコッド入りしているが、メンタルやフィジカルのコンディションは?

 体はすごく今、ボロボロです(苦笑)。(所属する東芝からは)まずはしっかり休めと。セブンスは自分のチョイス(と言われている)。(五輪に)出たいという思いはもちろんありますけれど、できるかどうかですね。

――日本チームには日本人と外国人、両方の選手がいて文化も違うが、まとめていく上で注意したことは?

 外国人に関しては、まとめていく必要はなかったです。どちらかと言えば日本の選手と外国人選手との交流をどううまくするか。その辺は、例えばご飯の席であまりかたまって話すのではなくバラバラにしたり……。まとめるのはそんなに大変ではなかったです。その中でパナソニックの人もいるし、サントリー、東芝、リコーと(各所属先の)考えがたくさんある中で、まとめるのはそれが1番大変だったかな。外国人と日本人よりも、みんなの考えを1つにするのが大変でしたね。

――なるべくコミュニケーションを取らせてまとめた?

 時間をかけて自然と良い感じにミックスできました。みんながハードワークをして、日本人も外国人の選手も同じことをやって、自然とみんながリスペクトし合うようになりました。

――五郎丸選手が「日本人は忠誠心があったからハードワークができた」と話していた。外国人選手は文化が異なるが、それでもみんながハードワークについていけた要因は?

 日本人、外国人関係なく、みんなが忠誠心を持っています。外国人の選手たちも、日本を勝たせたいという思いもあって、本当に日本代表の選手です。自分の好きなラーメン屋の話をしたり、日本と交流することが多いから、外国人選手にもたくさんの(日本への)深い思いがあります。

――リーチ選手は、国のために戦うという気持ちがモチベーションになっているように感じるが、その誇りはあらためて感じるか?

 日本にもう10年くらいいて、日本の外国人選手も知っているし、たくさん努力しているのもよく分かる。でも、世界中からあまりリスペクトされていないから、それを変えるためにたくさん努力をしてきました。

――南アフリカ戦以降、イングランドのファンや関係者の日本を見る目が変わったと思うが?

 だいぶ変わりました。1番小さい国が1番大きい国に勝ったことで、世界中から1週間、すごく注目されました。イングランドの人も、世界中誰も予想していないことでビックリして、みんな日本のファンになってくれて。

――イングランドの街中で声を掛けられた?

 街を歩いてカフェに行ったら、イングランドの人に「1回戦はできるだけ(点差を)100点以下にして」という話をされて、すごく腹が立って。(南アフリカに)勝った時にカフェに行って探しに行きました(笑)。

――髪を切りに行ってタダにしてもらった選手がたくさんいたようだが、リーチ選手もカフェでお茶をおごってもらったりした?

 ありましたね。(南アフリカ戦後)3日間くらいはどこに行ってもタダ、アイスクリームもタダ。本当にいろいろことがタダでしたね(笑)。

――今大会は主将としてチームを引っ張ってきたが、(自国開催となる)2019年W杯を目指すとしたらどういう立場でチームに関わりたい?

 今大会で感じたのは、キャプテンが英語を話せないと本当に苦労します。勝った要因の1つはレフリーと良いコミュニケーションが取れたこと。南アフリカ戦、サモア戦と良いコミュニケーションが取れて。逆にスコットランド戦と米国戦はちょっと合わなかった。僕も英語を話せるのに合わないから、日本語しか話せなかったらもっと合わない。

――レフェリーとのやりとりで心掛けたことは?

 たくさんスキルがあって、代表チームに元イングランド代表のキャプテンがいて、その人にアドバイスしてもらったりしました。世界トップのレフェリーと話をして、どういうタイミングでどういう言葉をかけているのか。それを全部やったらだいぶ変わりました。レフェリーの見る目が変わります。どんどんこちらがアピールしまくって、叫んだりしたら全くリスペクトされません。冷静に話して、カメラがついていない時に話したり。カメラを見ると、レフェリーとずっと話しているように見えるから、ちょっと見えないところで話しているとレフェリーも助かります。

――今後、スーパーラグビーに行くことも考えている?

 考えています。最高のリーグでプレーすることは僕にとっても良いし、日本代表にとっても一番良いと思います。

――11月からトップリーグも始まるが?

 しっかりこの2週間の間で体をリフレッシュして、ラグビーに対してのパッションを持って、今年こそ優勝したいと思います。東芝に入って5年、1度も優勝していないのでそろそろ優勝したいです。

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