ローズの物語が終わるには早過ぎる!?=全米の誰しもが願う逸材の完全復活

杉浦大介

ローズの“カムバック・シーズン”は10試合で終了

11月22日の試合で再び大ケガをしてしまったデリック・ローズ(左)。全米の誰しもが、彼の復帰を待ち望んでいる 【Getty Images】

 スーパースターと呼ばれる選手にはいわゆる“アンチ”も付き物だが、シカゴ・ブルズのデリック・ローズを嫌いというNBAファンはいないだろう。

 その積極果敢で爽快なプレースタイルがゆえか、謙虚で真面目な性格が一目瞭然だからか。2008年に全体1位でブルズ入りし、2010−11シーズンには史上最年少でMVPに輝いたスピードスターは、短期間にNBAを代表する人気選手になった。“マイケル・ジョーダンの街”シカゴに現れた新たなヒーローに、多くの人間が新時代の夢を投影したのである。

 しかし、そんなスポーツファンを悲しませるシーンが現地時間11月22日(以下同)に訪れた。

 この日、ポートランドで行なわれたトレイルブレイザーズ戦中に、ローズは右膝の半月板を損傷。その後に手術を余儀なくされ、今シーズンの残り全試合を欠場することがほぼ確実になってしまった。
「神様には何かプランがあって、僕をスローダウンさせたがっていたのかもしれない。自分を信じる気持ちに変わりないよ。僕の物語は終わってはいない。復帰のためにできる限りのことをする。すぐに戻って来るさ」

 12月上旬に地元メディアの取材に応えたローズは、そんな前向きなコメントを残していた。

 しかし、ローズは2012年4月には左膝前十字靭帯損傷の大けがを負い、昨季を全休した上で満を持して復帰したばかりだった。待ちに待った“カムバック・シーズン”は11試合で終了(ローズが出場したのは10戦)し、ここでまたも長いブランクを余儀なくされることになる。25歳が再び経験する苦難の道のりを思えば、誰もが無念さを感じずにはいられないはずだ。

エースの再離脱以降は2勝7敗と失速

 そして、ブルズのほかの選手たちにとっても、エースの再離脱は“痛恨”という言葉では語りきれない痛手である。トム・ティボドーHC(ヘッドコーチ)仕込みの固いディフェンスで接戦に持ち込み、ローズの突破力から必要な得点を生み出すブルズの必勝パターンはここで霧散した。
「デリックは2011−12年も多くのゲームを欠場したし、昨季はまったくプレーできなかった。それでも多くの選手たちが穴埋めに奮闘してくれた。今年もまた多くのケガに見舞われたけど、まだシーズンは始まったばかりだし、新たなチャレンジととらえて欲しい。残った選手たちが持てる力を発揮すれば、成功と呼べるシーズンを過ごせると信じている」
 12月11日のニックス戦前にティボドーHCはそう語ってはいたが、残された選手たちも同じように感じているかどうか。

 ローズがいなくなった11月22日のブレイザーズ戦以降、ブルズは2勝7敗と失速。ルオル・デン、ジミー・バトラーといった主力選手も次々と故障し、タレント不足は明白になっている。

 去年のブルズはローズが不在でもシーズン45勝(37敗)を挙げ、プレーオフでも第1ラウンドで上位シードのブルックリン・ネッツを撃破する大健闘をみせた。しかし、2年連続で試練に見舞われ、デン、ジョアキム・ノアといったプロ意識に富んだベテランたちの我慢もそろそろ限界だろう。

 ローズの離脱とともに、現実的に今季ファイナル進出の可能性は消えてなくなったも同然。ティボドーHCはそれでも1戦1戦に全力を尽くすだろうが、フロントは今年が契約最終年のデン、あるいはカルロス・ブーザーらをシーズン中に放出し、原型チームを少しずつ解体していくことも考えられる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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