ローズの物語が終わるには早過ぎる!?=全米の誰しもが願う逸材の完全復活

杉浦大介

「状況が許すなら今季のプレーオフでプレーしたい」

“常にスーパースターを中心に動く”と言われるNBA。ローズという大きなドミノが倒れた今、ブルズも少し先を見据える時期が来たのかもしれない。

 そして、そんな未来を再び楽しみにするために、とにかく今はローズの完全復活を期待せずにはいられない。
 半月板損傷は一般的に選手生命を左右するケガとはみなされておらず、回復に楽観的な声も少なくない。今春に同じく半月板を痛め、より重傷とみなされたラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー)は7カ月後には復帰している。プレースタイル的にも共通点のあるウェストブルックが、今季に元気な姿をみせていることは心強い材料に違いない。

 当のローズも心が折れている様子はなく、「体調が戻って、状況が許すなら今季のプレーオフでプレーしたい」とコメント。“今季終了”と発表したブルズ側のプランに反し、ポストシーズンの大舞台で電撃カムバックを飾る可能性もまったくないわけではないのだろう。

輝きを放った才能が薄れてしまうのは惜しすぎる

 ただ……、24〜25歳という伸び盛りの時期に両膝を痛めたローズが、故障前と同じようにプレーできる保証はないのも事実である。

 この20カ月間で、出場したのは10試合のみ。特徴の1つだった爆発力がブランク後に薄れても不思議はないし、精神的な影響も計り知れない。

 今季の離脱前、平均15.9得点、FG成功率35.4%と低調だったのは、単に錆び付きがゆえだったのかどうか。そして、縁起でもない話だが、再度の復帰後、ローズがまた何らかのケガを経験してももう誰も驚かないだろう。

 一途にゴールに向かって来る故障前のローズは、リーグで最もエキサイティングな選手であり、一服の清涼剤のような存在だった。

 コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)、レブロン・ジェームズ(マイアミ・ヒート)のアンチはいても、ブルズの背番号1が好きではないNBAファンはいない。宝石箱を引っくり返したようなNBAでも、最もきらびやかなジュエリーの1人だった。

 それほどの才能の輝きが、20代半ばで多少なりとも薄れてしまうとしたら余りにも惜し過ぎる。新星登場とともに始まった名門ブルズの再興の波が、ここでせき止められてしまったら悲し過ぎる。

 物語が終わるには早過ぎる――。消し去り切れない懸念を抱きながら、全米のスポーツファンはローズの完全復活を心から願っているのである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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